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本好きリビドー(9)

◎快楽の1冊
『モンスター 尼崎連続殺人事件の真実』
一橋文哉/講談社 1600円(本体価格)

 日本犯罪史上、今後も忘れ去られることなく、人々の心に残り続けていくであろう事件は多数ある。角田美代子元被告が主犯となり、兵庫県尼崎市を中心地帯にして行われてきた連続殺人事件も間違いなくその一つに入る。
 ご存じの通り、角田元被告はすでにこの世にいない。2012年12月、留置場で自らTシャツで首を絞めて自殺した、とみられている。結果、この連続殺人の全容は解明しづらくなっている、というのが現状だ。
 本書はまさしく“ノンフィクション”として全く隙のないノンフィクション、である。
 目下、主犯が死んでもなお、多くの人が事件の真相へ迫りたい、と興味を持っているはずだ。そのような欲求に応えて著者は事件の関係者、深くあろうが浅かろうが、少しでも接点があった人たちに対し徹底的に取材をして、全容を浮かび上がらせようとしている。
 ごく一般的なのだけれど比較的裕福な家庭、をターゲットにして巧みに接近し、その家族関係を徐々に崩壊させつつ全財産を奪い取る、という大掛かりな略奪犯罪。角田元被告は複数の仲間を引き連れ、チームとなってそのターゲットを追い込み、大金を吸い取ったのである。そのプロセスで幾人もの方が殺された。
 著者はとにかく取材、取材を重ねている。角田元被告がどのような家庭環境で育ったのか、いかにして“家族乗っ取りビジネス”の技術を高めていったのか、一つひとつ取材を重ねながら、このあまりに稀有な悪の権化の内面へ迫っていくのである。
 ノンフィクションはかくあるべきだろう。当人が死んでいても、周辺を取材していれば必ず真実に近づくことができる。そういう信念を著者は持っているのではなかろうか。
 でき得るならば角田元被告本人に読んでもらいたかった力作だ。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 ダイアプレスが発行している隔月刊誌『裏ネタJACK』(935円+税)は、アンダーグラウンドなエロ業界の裏情報が満載。キャッチフレーズは【過激な出会い、極楽な体験、危険な遊び教えます】。発売中の号の表紙には『AV業界の裏事情すべてバラします!』とある。
 他にも「本当にあった修羅場&ハプニング」「芸能人がAVに堕ちる時」「私はこうしてAV女優になりました」「殺人、自殺、封印作品」「AV業界ハローワーク」と、いかにも実話誌的な見出しが並ぶ。女優がデビューするまでの足跡や、いわく付きの問題作として発禁処分を受けたAVの内容紹介など、スキャンダラスだが新聞やテレビでは話題にならない事件をルポしており“裏ネタ”好きは興味津々だろう。
 国立大学の才媛や音大の現役学生らが出演したAV作品などは、週刊誌等で騒がれることも多いため、読者も目にしたことがあるかもしれない。実際、現在では一流大学在学中、または出身の女優は少なくない。
 かつてのAV嬢といえば“人生を転落した女”というステレオタイプの見方が主流だった。しかし、今や職業やアルバイト先の一つとして認知されていることをうかがわせ、喫茶店や電車で隣り合わせた見知らぬ女性が、実はAV出演者ではないか…と思わず勘ぐってしまったりもする(笑)。
 トピックスとして掲載された「中国発! アジアのエロ凄すぎる画像」も、表の顔とは裏腹な非合法ポルノ大国・中国の実態を暴露していて面白い。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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