「しっかり調査させていただく。個人的には迎える準備はあると思っている」
立花陽三球団社長が記者団にそう発した。楽天も投手力が豊富なほうではない。全盛期のピッチングができないとしても、ローテーションを守る力があれば、他投手への好影響は計り知れない。また、藤平、安樂、小野、森、松井といった若手投手のお手本にもなってくれるだろう。しかし、スンナリと古巣帰還とはいきそうにない。
「巨人、中日、阪神なども先発投手のコマ不足に悩んでいます。岩隈には代理人が付いていますし、楽天とだけ話をすることは考えにくい」(米国人ライター)
それだけではない。シーズン途中の退団は事実上のクビだ。しかし、これに異を唱えたのが、イチローだという。
「岩隈は一見、ノホホンとした雰囲気ですが、実際は違います。イチローはリハビリ中の練習熱心さ、対戦打者の研究に余念のないマジメさを高く評価しています」(MLB中継の解説も務めるプロ野球OB)
岩隈は昨年9月に右肩にメスを入れている。その影響で今季も大きく出遅れ、5月にはマイナーでの実戦登板も果たしたが、完全復帰とはいかなかった。マリナーズは復帰まで待てないと判断し、楽天・立花社長の言う「調査」も、そのことを指しているのだ。
「肩、肘にメスを入れた場合、復帰までそれなりの時間を要します。個人差はあるが、1年以上は掛かります」(前出・米国人ライター)
37歳という年齢も、マイナス要素として捉えられたのだろう。もっとも、40歳を過ぎても現役を続ける選手もいる。巨人に帰還した上原浩治も43歳である。
「イチローが岩隈を高く評価しているのが気になります。滅多なことでは他人を褒めたりしないタイプです。そのイチローが認めているということは、オリックスも獲得に参戦してくるのでは」(前出・プロ野球OB)
イチローはオリックスと定期的に連絡を取り合っている。そのイチローが“推薦”するとなれば、オリックスは復帰を確信して獲得に動くだろう。
思い出されるのが、2004年のオリックスと近鉄の合併騒動である。合併にともない、新規参入の楽天と両チームの選手を分配ドラフトにかけたが、当時の岩隈は「楽天に行きたい」とし、オリックス行きを最後までゴネて、最終的には「金銭トレード」という形で楽天一期生となった。こうした経緯からして、オリックスが岩隈に好印象を持っているとは思えないが、イチローの推薦となれば、獲得を検討するだろう。
「楽天のゼネラルマネージャーになった石井一久氏も元メジャーリーガーです。米国にネットワークもありますし、イチローとの駆け引きになりそう」(前出・同)
関係者によれば、新旧・日本人メジャーリーガーの中で、もっとも強い発言力を持っているのは、長谷川滋利氏だという。長谷川氏の肩書はオリックスのシニアアドバイザーであり、マリナーズOBでもある。石井GMも岩隈獲得に失敗すれば、就任早々に求心力を失ってしまう。
岩隈はどんな選択をするのか…。イチロー&長谷川氏と石井GMの駆け引きも興味深い。(スポーツライター・飯山満)