しかし、この撃墜措置に対してはアメリカ国内外でも賛否が分かれている。特に海外の専門家からは「UFOがどこから来たのか分かるまで、撃墜には慎重になるべき」との意見が出ているようだ。
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例えばイギリスの元航空幕僚長であり、1990年の湾岸戦争で英国空軍打撃司令部の最高司令官を務めたマイケル・グレイドンは「怪しい機体を戦闘機で粉々に吹き飛ばすのは、その起源を特定する最善の方法ではない」と述べ、さらに多くの謎の機体が発見された場合を踏まえて、自制することを示唆する発言をした。
彼はイギリスのLBCラジオに出演した際、「何が入っているか分からないうちは、確かに刺激的なニュースだと思う。しかし、内部にスパイ機器が搭載されている可能性も高い」と語った。
同じような飛行物体がイギリスの領空に入った場合、排除する必要があるかという質問に対しては次のように答えている。
「おそらく最も可能性が高いのは、海に向かって漂い、その後周囲に影響を及ぼさない場所に移動したことを確かめてから撃ち落とすことだろう。しかし領空侵犯してきた物体に対して興奮し、排除を急ぐ前に、実際にその物体の中に何が入っているのかを調べることは非常に有益であろう」
また、2月4日に撃墜された物体は中国の高高度偵察気球である可能性が高いという見解が米軍から出ている。
マイケルは「中国は既に多数のスパイ衛星を持っているのに、なぜわざわざ気球を必要とするのか、理由が明らかになっていない。おそらく衛星から得られる情報は十分であり、さらにGoogleやその他を利用すれば非常に多くの情報を得られるだろう。他の情報源から得られないものを気球から得ているのかもしれないが、私には全く理解できない」と述べている。
ちなみにイギリスのスナク首相は、イギリスには今回アメリカで騒動を起こした気球のような脅威を「阻止」するための「完璧な迅速対応」能力があると主張している。しかし元駐米英国大使で国家安全保障アドバイザーのキム・ダロッシュは、納得していないと述べている。
「この数十年間、つまり冷戦の終わりからずっと、イギリスは防衛への投資が不足していると思う。本当に必要なキットや装備をすべて持っているわけではないし、軍隊が持つ技術にもギャップがある。だから、首相が言うような万全の体制で臨めるかどうかは分からない」と懸念を示している。
我が国でも同様の飛翔物体が領空侵犯してきた際、どのような対応を取るべきか議論になっている。気球騒動に関し、どの国でも改めて検討すべき問題があることを見せつけたと言えるかもしれない。
山口敏太郎
作家、ライター。著書に「日本怪忌行」「モンスター・幻獣大百科」、テレビ出演「怪談グランプリ」「ビートたけしの超常現象Xファイル」「緊急検証シリーズ」など。
YouTubeにてオカルト番組「アトラスラジオ」放送中
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