豊昇龍は立ち合いから碧山を攻めあぐね逆に左上手を許したが、直後に体を左方向にねじりながらの強引なすくい投げを見舞い勝利。ただ、TV解説を務めた宮城野親方(元横綱・白鵬)は「本来であれば、私は豊昇龍にこの相撲をとってほしくはない」と身体的負担が大きく好ましくない取り口と指摘し、ネット上にも同様の苦言が寄せられた。
>>元横綱・白鵬が豊昇龍に苦言「この相撲とってほしくない」トーナメント戦の強引な投げ問題視、先場所の二の舞となるリスクも?<<
豊昇龍は2023年1月場所9日目・若元春戦で土俵際に追い込まれ無理やり小手投げを繰り出すも、不発で敗戦した上に左足首を負傷している。このように強引な投げ技は自身の故障につながるリスクが少なくないが、豊昇龍については今から4年前に相手を故障させたこともある。
アクシデントが発生したのは、豊昇龍が幕下だった2019年1月場所10日目の宇良(現幕内)戦。立ち合い、豊昇龍は両手で宇良の肩を押さえ出足を止めると、すかさず後方に引きはたき込みを狙う。しかし、宇良は豊昇龍の腹部に頭をつけながらこらえると、両まわしを引きながら一気に前に出た。
すると、土俵際へ押し込まれた豊昇龍は宇良の背中越しに右上手をつかみつつ、体を左方向にねじりながら無理やり掛け投げを見舞う。宇良は右足一本でこらえようとするも及ばず背中から地面に落ちた。
力技で劣勢を覆した豊昇龍は取組後すぐに西の徳俵前へ戻ったが、宇良は土俵下から土俵に戻る際に右足を引きずっており、取組後の一礼でも全く腰を下ろすことができず。この様子を見た場内からはどよめきが上がった。
宇良は取組後の一礼を終えた後、呼び出しの肩を借りながら土俵下に降りると、車いすに乗せられて花道を下がりそのまま病院へ。そこで右膝前十字靭帯断裂と診断され、翌11日目から途中休場することとなった。
宇良は2017年9月場所中に右膝前十字靭帯を断裂し、同場所を含め6場所連続休場、番付も平幕から三段目まで転落している。この経緯もあってか、取組後の報道では豊昇龍が花道で宇良に「すいません」と謝罪し、宇良も「大丈夫」と答えたことが伝えられていたが、結果的に再び同じ大けがをすることとなった。
2019年1月場所をまさかの形で終えた宇良は同年9月場所まで休場をしいられ、復帰した11月場所では序二段まで転落。そこから再びはい上がり現在は平幕まで返り咲いているが、師匠の木瀬親方は『Number Web』(文藝春秋/2019年5月10日付)の記事内で「さすがに立ち直れないかな? と思っていて『顔を見たらなんと言おうか……』と考えました」と当初は引退も覚悟していた旨を明かしている。
「豊昇龍は現在関脇・若隆景と共に次の大関候補として期待されていますが、故障リスクの高い強引な投げに加え、立ち合いでしばしば変化を見せることも課題とされています。 2022年9月場所千秋楽の平幕・遠藤戦で変化した際は、叔父の朝青龍氏(元横綱)が自身の公式Twitterに『こんな取り口いいのか? 勝負から逃げる バカやろ』、『若いのに 恥ずかしい』などと豊昇龍を酷評するツイートを投稿したことも話題となりました。注文相撲、強引な投げはどちらも、立ち合いで迷いが生じていることの表れともみられていますが、このあたりを改善しないと大関、横綱といった地位まで上り詰めるのは厳しいでしょう。ただ、豊昇龍は足腰が強いこともあり変化、投げ共にうまく決まってしまうことが多く、これも数年前から取り口に改善が見られない一要因と考えられますが、変に成功体験を積んでいる分癖を直すのも難しくなっているのでは」(相撲ライター)
豊昇龍は関脇で迎えた2022年11月場所で11勝、2023年1月場所も関脇で8勝をマークしており、次の3月場所で14勝以上を挙げれば、三役で直近3場所33勝以上という大関昇進目安を満たす状況となっている。白鵬にも指摘された課題をクリアし、昇進をたぐり寄せるような成績を残すことはできるのだろうか。
文 / 柴田雅人
記事内の引用について
朝青龍氏の公式Twitterより
https://twitter.com/Asashoryu