古木さんは松坂大輔さんのいわゆる外れ1位で、類まれなる長打力を買われ横浜ベイスターズに入団。2002年の後半1カ月半で9ホームランを量産し、暗黒時代のベイスターズファンにとって希望の星として期待されていた。翌年は22本のホームランを放ちながらも確実性を欠き、また不得手な守備もウイークポイントとして露呈。2007年にはオリックスにトレードされ、2009年には無念の戦力外となってしまった。
しかしここからが破天荒だ。突然格闘家に転身を宣言すると、六本木の街を黙々とランニングするなど、ストイックにトレーニング。2010年の大晦日にはアンディ・オロゴンと対戦し、フルラウンドの判定負けを喫したものの、そのチャレンジスピリットは見るものに勇気を与えた。
その後はかずさマジックで野球に再挑戦。基礎から守備を見つめ直し、11、12年と続けてトライアウトを受験。残念ながらプロ復帰はかなわずも、翌年にはハワイに渡りプレー。その年にそっとバットを置いた。
現在は横浜で中学生に野球を指導中。LAST GAMEにもたくさんの教え子が観戦に訪れ「見に来てくれた子どもたちの前でヒット打てて良かったです」とホッとした表情を見せた古木さん。野球とサーフィンを愚直に愛する男は、42歳の現在もかっこよく輝いていた。
取材・文・写真 / 萩原孝弘