しかしその裏には、昨年オフに加入した経験豊かな男が陰に日向にチームを支えていた。昨シーズンは若い力を中心に戦ってきた反面、石川雄洋氏やホセ・ロペス氏などがチームを去り、ベテランと呼ばれるプレーヤーが少なく、チームが窮地に立たされた際のよりどころが見当たらなかったことも低迷の要因の一つと目されていた。
その穴を埋める働きを見せたのがファイターズをノンテンダーとなり、複数のオファーを受けながらベイスターズに入団した大田泰示だった。サヨナラの舞台を複数回演出し、横浜スタジアムでお立ち台に立つこと3回、「横浜最高!」のフレーズは多くのファンを魅了した。また「声でもチームを勢いづけてくれた」と三浦大輔監督が何度も強調するように、ベンチにいながらも先頭に立ってナインを鼓舞する姿は、チームに一体感をもたらせた。
大田は真理として「僕はゆとり世代と言われる世代で考え方が甘いとか、ぬるいといろいろ言われてきたんですけど、みんなで声出してみんなで盛り上げるのはずっとやってきたし、それが正解ってわけではないですけど、やるなら真剣に声かけ合って励まし合って一体感を生み鼓舞する」ことが重要と解く。
また「僕らが出られない分、出ている人が活躍してくれないと勝てないですし、自分がゲームに入り込んで声出しておかないと、いざ出たときに困るのは自分。そういったことがチームにとってプラスになってくれることは、やっていてよかった」と満足そうに振り返った。
来シーズンはレギュラー奪取を「頭の中のど真ん中にある」と言い切ったスラッガー。東海大相模高時代から慣れ親しんだ横浜スタジアムで、入団会見で目標とした「三浦監督を胴上げする」という夢へ向けて、プロ15年目のシーズンへと驀進する。
写真・取材・文 / 萩原孝弘