この日の豊昇龍対平幕・遠藤戦は勝った方が勝ち越しの大一番だったが、立ち合い当たらず変化した豊昇龍がそのまま勝利とあっけない結果に。取組直後、朝青龍氏は自身の公式Twitterに「こんな取り口いいのか? 勝負から逃げる バカやろ」などと怒りのツイートを投稿。ネット上のファンからも「朝青龍がキレるのは当然、くだらん勝ち方しやがって」、「豊昇龍はこの後、いつかの白鵬みたいに泣いて謝る羽目になるのでは」といった呆れ声が寄せられた。
>>元横綱・朝青龍氏が甥・豊昇龍に激怒!「バカやろ」「若いのに恥ずかしい」 千秋楽で勝ち越しも、逃げ腰の相撲にファンも失望<<
立ち合い変化は、決まれば相手の体勢を大きく崩すことが可能。だが、成功・失敗にかかわらず早期決着であっけない相撲になることが多いことなどから好むファンは少なく、場合によっては猛バッシングを受けるリスクがある戦法。今から6年前の2016年3月場所では、立ち合い変化を見せた横綱・白鵬(現宮城野親方)が取組後に謝罪する異例の事態も起こっている。
問題となった一番は、同場所千秋楽の横綱・日馬富士(現・新モンゴル学園理事長)戦。前日まで「13勝1敗」の白鵬はこの一番に勝てば優勝決定。「9勝5敗」の日馬富士は既に優勝の目はついえていたが、勝てば白鵬を大関・稀勢の里(元横綱/現二所ノ関親方)との優勝決定戦に引きずり込める状況だった。
本割で優勝決定か、それとも優勝決定戦突入か。多くのファンが固唾を飲んで見守る中、この大一番で白鵬は立ち合いまさかの変化を選択。対照的に低く鋭く突っ込んだ日馬富士は左に動いた白鵬に全く対応できないまま、自分から土俵下に落ちて行った。
取組時間約1秒で決着というあまりにもあっけない結末に、場内はどよめきや怒号が上がり、一部ファンが座布団を投げ込むなど騒然。ネット上にも「はあ!? ここで変化!?」、「熱戦期待してたのに…マジで空気読めよ」、「まともに勝負せず逃げた白鵬は恥を知れ」と批判が殺到した。
14勝目を挙げ優勝を決めた白鵬はその後表彰式に臨んだが、こんな優勝は認めないという抗議の意味合いがあったのか、式が始まる前に席を立つ観客が続出。また、残った客からも式中、何度もヤジが飛んだ。
これには白鵬もかなりのショックを抱いたようで、優勝インタビュー中に涙を流しながら「ああいう変化で決まると思わなかったので、本当に申し訳なく思います」と謝罪。それでもブーイングは収まらず、最後まで後味の悪さを残したまま3月場所は幕を下ろした。
ファンに大バッシングされた白鵬の立ち合い変化だが、当時の報道では相撲協会内部でも見方が分かれたと伝えられている。協会・八角理事長(元横綱・北勝海)は白鵬が左に動くと同時に左腕で日馬富士の体勢を崩していたことから「変化というより、いなしだよね」、「相手がどう来るか様子を見ていたのでは」と一定の理解を示す。一方、伊勢ケ濱審判部長(元横綱・旭富士)は「物足りない相撲だったということは間違いない」と苦言を呈したという。
以前から過度なダメ押しなどが目立ち、横綱としての品格に疑問符がつけられていたこともバッシングが強まる一因となった白鵬の立ち合い変化。今回の豊昇龍は白鵬ほど批判されてはいないが、偉大な叔父の怒りを買ったことは重く見る必要もありそうだ。
文 / 柴田雅人
記事内の引用について
朝青龍氏の公式Twitterより
https://twitter.com/Asashoryu