この試合は、鳥取県提供の「とっとりデー」として開催され、鳥取県米子市出身で「鳥取ふるさと大使」を務める武尊が選ばれたのだ。武尊は「鳥取和牛オレイン55」にちなんで、背番号55のユニフォームを着てマウンドに上がると、104キロのストレートを投げ込み、スタンドを沸かせていた。
始球式後に、武尊は「小さい頃、野球をやっていたし、元々ジャイアンツファンでもあったので、純粋に東京ドームのマウンドに立って、投げられたことがすごく嬉しかったです。また、観客の皆さんの歓声もすごく嬉しかったです。原(辰徳)監督に声をかけていただき、熱いお話もしていただきました。緊張しましたが、とても楽しかったです」と子どもの頃に戻ったかのような純粋な笑顔で、自身の投球を振り返っている。
武尊にとって、今回の東京ドーム“登板”には熱い思いがあったはずだ。約1か月前の6月19日には、格闘技メガイベント『THE MATCH 2022』のメインイベントで、那須川天心とのスーパードリームマッチが実現。判定の末、敗れはしたものの、56399人(超満員札止め)の大観衆を魅了。試合後は感情が溢れてしまったのか、涙で言葉にならず、ファンや関係者に対しての謝罪だけを残して会場を後にした。
後日、会見でヒザの怪我とうつ病を告白。「数年前から精神科に通わせていただいていて、パニック障害とうつ病と診断されていて。その部分っていうのは昔からでもあったんで、自分でもそこと上手く付き合いながら出来てたんですけど、今回の試合の約1年前ぐらいですかね?まあ決まるまでで言ったら数年間ですけど、そこで自分の心が耐えられるのかなっていう不安もあったし、知らず知らずのうちに自分の心が壊れていっているのを感じていて…今回の試合前にちょっと体調が悪くなった」時期があったことから、復帰に向けて保持していたタイトルも返上し、選手としての活動も休止するとした。
そんな中、1か月前とは違う形で、明るい武尊を見せられたのは大きな収穫だろう。復帰までの間、これまでも行って来たタレント活動など、試合以外で武尊を目にする機会が増えそうだ。
(どら増田 / 写真提供(C)K-1)