この日は13奪三振とドラゴンズ打線をきりきり舞いさせたが、そのうち10個はストレートで仕留めた。過去2年間は左肩不調との戦いが続き、キレが良くホップ成分の多いストレートが本来のモノではなかったが、この日は完全にけがの前の状態に戻ったような内容。復帰戦となった5月6日は6回3失点と及第点ながら奪三振は3と少々物足りなさを感じさせたが、2度目の登板で一気に状態はジャンプアップしていた。
今シーズンの投球内容は半分以上がストレート。大きなカーブで目先を変え、カットボールでバットの芯を外していき、割合は大幅に減ったもののチェンジアップの精度も高い。ストレートの走りが素晴らしいことで、すべてのボールの信頼度も高くなる相乗効果が得られている。
今シーズンも三浦大輔監督が「開幕投手の最有力候補」と推していたが、キャンプ中に左腕肉離れを発症。開幕一軍も逃し、チームも5位に定着してしまうなど選手会長として悔しい状況が続いていた。チームの「中途半端な状態では戻さない」方針のもと、ゴールデンウィークまで戦線復帰は延びていたが、結果的にこの判断は吉と出たようだ。
昨年は濱口遥大、今年は東克樹が開幕投手を務めたが、現在ローテーションの軸となる状況とはいかなかった。勝っているときはさらに勢いを増し、負けているときは嫌な流れをキッチリと断つのがエースの仕事。いい流れを引き継いで19日もベイスターズは勝利した。
かつて2年連続で開幕投手を務め、“絶対エース”の名を欲しいままにしていた今永昇太。復活の左腕が再びローテーションの軸にハマれば、三浦ベイスターズの再発進の大きな推進力となる。
写真・取材・文 / 萩原孝弘