この日先発の九里は「5回106球3失点(自責2)・被安打6・四死球4」と試合を作れずにいた中、6回表無死で第2打席が回ってきたところで代打を送られ降板。この直後、九里はベンチ内で突然地面を両足で何度もけりつけるなど荒ぶる姿を見せた。
>>広島・九里、ベンチで地団太を踏み激怒? 真顔の助っ人に批判のワケは、降板直後の一場面が物議<<
中継カメラが映していたこの九里の姿を受け、ネット上には「九里が地団太踏んで怒ってる」、「不甲斐ない投球内容に感情が抑えられなかったのか」と驚きの声が寄せられた。一方、「八つ当たり自体は良くないことだけど、手で物を殴ったりしなかっただけまだマシに思える」、「その後表だって采配批判するようなことも無くてホッとした」と、この程度の荒ぶり方で済んで良かったとするコメントも多数見られた。
球界では過去にも、降板後に悔しさを抑えきれない姿がファンの間で話題となった選手がいる。DeNA・パットン(現テキサス・レンジャーズ)は、今回の九里よりも激しい怒りで八つ当たりをし、けがをしている。2019年8月3日・DeNA対巨人戦、「5-3」と2点リードの8回表に3番手として登板したパットンは、「0.0回2失点」と1死も取れずにKOされる。降板を告げられベンチに戻ると、ふがいない自身へのいら立ちからか、ベンチ内に設置されていた冷蔵庫を殴打。右手で2発、左手で1発、ボクサーのワンツーパンチのように殴りつけた。
この行動により「右手第5中手手根関節の脱臼骨折」をしたパットンは、球団から罰金500万円、球団が行う野球振興活動への参加というペナルティを科されている。また、負傷によりレギュラーシーズンを棒に振ったため、多くのファンから「こんな形でシーズン終盤戦を離脱するなんて」と失望の声が寄せられた。なお、当時の報道によるとパットンに殴られた冷蔵庫は無傷だったといい、このことを面白がる声も一部あった。
降板後の悔しさの大きさから、物への八つ当たりにとどまらず監督を公然と批判した投手もいる。日本ハム・金村暁(現阪神一軍投手コーチ)は、先発を務めた2006年9月24日・ロッテ戦で、「4-1」と3点リードで迎えた5回裏2死満塁の場面で、当時のヒルマン監督(現ロサンゼルス・エンゼルス育成コーチ)に降板を告げられる。これにより、5年連続2ケタ勝利、6年連続規定投球回到達を逃した金村は、試合後に応じた取材の中で「絶対に許さない。外国人の監督だから、個人の記録はどうでもいいんでしょう。顔も見たくない」とヒルマン監督を痛烈批判しファンを騒然とさせた。
ただ、金村はその後球団から罰金200万円、プレーオフ終了までの出場停止処分を受けたことや、前年まで日本ハムで共にプレーしていた岩本勉氏(現野球解説者)ら先輩たちから叱咤激励を受けたことで猛省。この姿勢を受け入れたヒルマン監督は、同年10月25日の日本シリーズ第4戦・中日戦で金村を先発起用。金村も「5回無失点」の好投でヒルマン監督に応えた。
今回の九里は地面をけりつけた後、すぐに手に持っていたペットボトルの水を飲んで落ち着きを取り戻しており、試合後も首脳陣批判などはしていない。八つ当たりが目立ってしまったものの、特に大事には至らなかったことに安堵したファンもいただろう。
文 / 柴田雅人