そんな中、「親ガチャという言葉に救われた」という意見もある。
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幼少期に過酷な環境で育ったことで知られる俳優の高知東生は9月22日、自身のツイッターで、親ガチャという言葉について「賛否両論あるみたいだけど、俺は言葉ができたことで、共感や救いが生まれたって思うんだよな」とコメントしている。高知のように、「親ガチャ」という言葉に救われたと感じる人の心理には、いったいどのようなものがあるのだろうか。
そもそも、「親を大切にするのは当たり前のこと」「育ててくれた親に感謝するべき」といった感覚は、親に大切に育てられてこそ自然に生まれるもの。一方で、幼少期に親から愛情を与えられず、虐待を受けるなど生まれながらにつらい環境で育った人にとっては、「親に感謝する」という感覚に共感しにくく、むしろそれを強いられることに苦痛を感じる場合もある。しかしながら、世間一般では育ててもらったことに対して感謝することができてこそ、道徳心が備わった「良い子」「一人前の大人」として評価されるという風潮や、生育環境のせいにするのは「甘え」と指摘する声もあることから、心から親に感謝できない自分を責めてしまう人もいる。
そうした葛藤を持つ人が「親ガチャ」という言葉に救いを感じるという心理的背景には、心から親に感謝できないのは自分が悪いわけではないということを改めて認識させてくれる安心感や、自己肯定感へのポジティブな影響が考えられる。
また、愛情に恵まれた家庭で育った人と自分とを比較して劣等感やストレスを募らせてきた人にとっては、皮肉めいた「親ガチャ」という言葉の“言い得て妙”という感覚が、カタルシス効果を与えているとも考えられる。
カタルシス効果とは、心の中にある言語化しにくい複雑な感情を言葉にしたり、涙を流す行為によってストレスを解消する効果のこと。同効果は他者によって表現された芸術や、言語表現がもたらす共感からも得ることができる。
一見、たわいのない言葉のように思える「親ガチャ」だが、特定の人にとっては意外な心理効果を与えているようだ。
文:心理カウンセラー 吉田明日香
記事内の引用について
高知東生公式ツイッターより https://twitter.com/noborutakachi