チームでは過去8名が受賞している新人王。いずれも好プレーヤーぞろいとなっている。最初に輝いたのは1953年の権藤正利氏が15勝で獲得し、56年には“伝説のアンダースロー”秋山登氏が受賞。秋山氏は60年の大洋ホエールズ初優勝時にMVP、日本シリーズでも4戦全てに登板し最優秀投手と活躍し、野球殿堂入りも果たしたレジェンドである。59年には31ホームランを放ち、打点も84と驚異的な数字を残し、あの村山実氏に圧倒的大差をつけ受賞した桑田武氏。64年にはプロ入り3年目ながら17勝を挙げ、引退後はタイガースで長くコーチを務めた高橋重行氏が、77年には横浜大洋ホエールズの象徴的ピッチャーで、その後もコーチとしてベイスターズを支えた、ヒゲがトレードマークの齊藤明雄氏が8勝で受賞した。
横浜ベイスターズ時代の00年には、野性味あふれるスイッチヒッター・金城龍彦現ジャイアンツコーチが受賞し、打率.346で首位打者も獲得し史上初のダブルでの栄冠に輝いた。15年には37セーブの新人記録を樹立した小さな大魔神・山崎康晃が、最後は18年にジャイアンツキラーとして名をはせた東克樹が11勝5敗の成績で文句なしの栄冠に輝いた。
今年の本命だったタイガースの佐藤輝明が二軍調整中だが、カープの抑えの切り札でゴールドメダリストの栗林良吏、盗塁王を争うタイガース・中野拓夢などルーキーの当たり年の今年はハイレベルな闘いが続く。
新人王は記者投票で決まるシステムで、18年には濱口遥大が10勝を挙げながら、京田陽太、大山悠輔に続く3位だった前例があるだけに、アドバンテージがあるとは思えないが、今の勢いなら牧にも逆転のチャンスは十分とみる。偉大な先輩たちに並び、一生に一度しか取れない栄冠を手にする牧の姿を、ベイスターズファンは心待ちにしている。
取材・文 ・ 写真/ 萩原孝弘