チーム、選手への表彰はないが、レギュラーシーズンと同様に順位や個人成績が記録されるOP戦。投打共に各部門トップの数字を残した選手には期待が集まるが、シーズンでは一転して今一つの成績に終わるケースもなくはない。近年その傾向が続いている部門の一つが最優秀防御率だ。
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2018年のOP戦で最優秀防御率に輝いたオリックス・西勇輝(現阪神)は、「4登板・1勝0敗・防御率0.49」をマーク。失点を喫したのはOP戦ラスト登板の同年3月23日・阪神戦(6回1失点)だけだったため、開幕投手に内定していたシーズンの好成績を期待する声は多かった。
しかし、西は同月30日の開幕戦・ソフトバンク戦で敗戦投手になると、その後も黒星が先行する苦しいシーズンに。最終戦となった10月1日・楽天戦に勝利し何とか2ケタ勝利はクリアしたが、シーズン成績は「25登板・10勝13敗・防御率3.60」と3つの負け越しを喫した。
2019年のOP戦で「3登板・2勝0敗・防御率0.96」をマークし、最優秀防御率となったのはオリックス・東明大貴。前シーズンは「7登板・1勝4敗・防御率2.27」と少ない登板ながら防御率は2点台だったため、2015年以来となる2ケタ勝利が期待されていた。
ただ、迎えた同年シーズンは4月までの4登板で「1勝1敗・防御率.5.94」と安定感を欠き、同月21日に二軍に降格。その後7月4日に再昇格したもののそれ以降は登板機会がほとんどなく、最終成績は「7登板・1勝1敗・防御率7.11」に終わっている。
2020年のOP戦では、ロッテ・種市篤暉が「2登板・0勝0敗・防御率1.00」で最優秀防御率を獲得。その後のシーズンでも7月までは「6登板・3勝1敗・防御率2.20」と先発ローテの一角をしっかり務めていた。
ところが、8月1日の楽天戦で「5回2/3・8失点」とKOされた種市は、翌2日の抹消後に右ひじの故障が発覚。これにより9月14日に右肘内側側副靭帯再建手術を受けたため、「7登板・3勝2敗・防御率3.47」という成績でシーズンを終えることとなった。
苦戦が相次いでいるここ3年のOP戦最優秀防御率投手たちだが、OP戦で好成績を残したことで他球団のマークが強くなったことが苦戦の主原因として考えられる。また、調子のピークを早く持ってきてしまい、シーズンに入る頃にはピークアウトしてしまったという見方もできるだろう。
一方、それまで通算64勝の西が苦しみながらも2ケタをクリアし、同17勝の東明、同8勝の種市が今一つだったところを見ると、後者2名は他球団にはめられた可能性もある。OP戦ではバッテリーが相手打者にシーズンとは全く異なる配球をする、いわゆる“撒き餌”を行うこともしばしばだとされるが、この両名については実績が伴わないまま一軍起用させるため、相手打者がわざと打たなかった可能性もあるかもしれない。
ただ、投打の違いはあるが昨季はOP戦首位打者の阪神・大山悠輔が「116試合・.288・28本・85打点」といった好成績を残し、それまで数年“タイトルホルダー”の不振が続いていた流れを覆してもいる。OP戦最優秀防御率についても近年続いている負のジンクスが止まる可能性はあるが、今年の最優秀防御率投手は果たしてシーズンでどのような成績を残すのだろうか。
文 / 柴田雅人