去る2月16日、阪神と楽天の練習試合が行われた。楽天の先発は、プロ5年目の高田萌生投手。昨季途中、巨人からトレード移籍してきた右腕で、石井一久GM兼監督も「田中、涌井、岸、則本の超豪華・先発ローテーションに割って入る投手がいるとしたら、高田」と期待を寄せていた。
「同日の練習試合ですが、高田と同級生にあたるドライチルーキーの佐藤との対決に注目が集まっていました」(ベテラン記者)
注目の対決は、初回に実現した。バットを折りながらも右翼ポール際に叩き込む大ファールとなったのは、既報通り。そのケタ外れなパワーに楽天ベンチも「オォ~」と唸り声を上げていたが、こんな評価も聞かれた。
「確かにパワーはケタ外れ。でも、バットスイングが良いからあれだけの大飛球になったんです。外角の変化球に対してはもっと勉強しなければならないところもありますが、甘いコースに来ればスタンドまで軽く飛ばしてしまう…。佐藤はパワーだけではなく、バットスイングの巧さで打球を飛ばしています」
ネット裏で視察していたライバル球団のスコアラーがそう言う。
力ではなく、技術で飛ばす。パワーは持って生まれた才能、技術は努力や、良い指導者に恵まれれば習得することができる。そう考えると、佐藤は良い環境で野球を学んできたことも分かる。
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一方、佐藤と対戦した同級生の高田だが、甲子園大会でも活躍し、「将来のエース候補」として、2016年のドラフト会議で巨人に指名された。しかし、プロ入り後の4年間はほとんど二軍で過ごしており、その素質を活かし切れていない。
「巨人、楽天のコーチたちは高田の才能を認めており、熱心に指導してきました。本人も一生懸命やっていますが」(前出・ベテラン記者)
阪神の宜野座キャンプを全て見たわけではないが、佐藤は「考えながら練習している」という印象を受けた。ティー打撃の途中休憩の時、佐藤は先輩選手のスイングを見ている。ティー打撃を再開させると、その先輩選手のスイングを模倣し、コーチに質問もしていた。
コロナの影響で今年はグラウンドに下りられない時も多いので、佐藤がどんな質問をしたのかは確認できなかった。しかし、単にスイング回数を重ねるだけではないことは分かった。
「今のままでは外角の変化球に苦労させられるというのが、彼に対する冷静な評価でした。でも、先輩たちの打撃スイングを見て、自分なりに何が足らないのかを察したようですね。学習能力の高い新人だと思います」(前出・他球団スコアラー)
阪神のチーム事情だが、主砲・大山悠輔内野手が腰背部を痛め、今は大事を取って別メニューとなっている。外野手でスタートした佐藤が代理三塁手も務めていたが、本人が「やりたい」と言っていただけのことはあって、軽快なフットワークも見せていた。
「今年は優勝を意識しているので、佐藤にばかりかまっていられない」(在阪記者)
ペナントレース本番でも“大飛球”が見たい。
高校からプロ入りした同級生、大学を経て飛躍した佐藤。たとえ失敗しても、矢野燿大監督には、佐藤に「考える機会」を与えてほしいものだ。(スポーツライター・飯山満)