2013年のルーキー時より先発マウンドに登り続け、8年のキャリアを経てFA資格を取得した今オフ、プロ選手としての自身の可能性を手繰り寄せる機会が訪れた。
1年目に16勝を挙げ最多勝、最高勝率にも輝くなど、まさにメジャーの大投手・ライアンの異名の如く躍動感あふれるマウンド姿で、強烈な印象を放った。だが、その後は目立った成績を残せず、ここ2年は防御率も4点台と、ヤクルト投手陣を支える存在であるだけに、燕ファンのやるせなさは膨らみ続けている。
宣言後、日本ハムや巨人が獲得へ乗り出したとも伝えられ、小川自身も「気持ちが揺らいだ」と心境を吐露。プロである以上、選手としての価値を探ったことは自然の流れだが、これまでの成績から、今回のFA宣言への様々な反応があったことも事実だ。
また、FA制度が設立以降、多くの選手たちが権利を行使してきた歴史がある中で、移籍、残留に関わらず、周囲からの期待に応えるとともに、選手としての覚悟とプライドを成績で表さなければならない。思い出されるのが、FA導入初年度の1993年、当時、巨人3本柱の一人だった槙原寛己がFAを宣言するも、長嶋監督の慰留により残留。翌年に完全試合を達成し、日本一にも貢献。自身の評価へ疑問を抱いたが故の権利行使に対する「答え」を実力で示している。
小川も同様に、これまでの評価を覆すため、そしてチームへの想いを表現するためには、更なる飛躍が求められる。高津監督からは既に2021年シーズンの開幕投手に指名されており、もはやチーム内での立ち位置も明確になった。年明けには自主トレを公開、その中で「進化した自分を見せなければならない」と今季への強い想いを語っている。
昨年は投手としての栄誉であるノーヒットノーランという大記録を達成し、改めてポテンシャルの高さを見せつけた。来たるべき新シーズンは、東京ヤクルトスワローズのエースとしてチームを上昇気流へと導き、さらには再びチームに栄光をもたらすべく、その右腕に力を込める。(佐藤文孝)