しかし、結論は出なかった。球団は「年越しとなるかも」とこぼしていた。
「4年契約を提示したようです。年俸も2020年の9000万円から約2倍のアップがあったと聞いています。残留すれば、7億円前後の大型契約となります」(スポーツ紙記者)
球団の誠意は伝わっている。小川が「残る」と言えない理由はどこにあるのか――。ひょっとしたら、アノ球団からのオファーを待っているのかもしれない。
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小川のFA交渉について、気になる点もある。
球団、選手、メディアとの関係についてだが、一般論として、FA選手との交渉日時は事前に知らされることが多い。現地取材NGであれば、メディア側はそれに従い、場所を特定するような書き方はしない。その代わりに球団、選手双方から交渉後のコメントをもらってきた。
そんな関係性の是非はともかく、そういう申し合わせの慣例に照らし合わせてみると、小川のFA交渉には不可解な点もある。
<日本ハム、小川獲得へ>
北海道日本ハムファイターズが小川獲得に向けて動き出すとの一報があったのは、12月5日。翌6日には各紙で報じられたが、日本ハム、小川の双方からその交渉に関する情報が全く聞かれないのだ。
内々に交渉した可能性もゼロではないが、日本ハム側にその気配も見られない。
「後日談として漏れてくるものもあるのだが、今回はそれもない」(前出・同)
また、残留交渉を続けるヤクルトから、こんな情報も聞かれた。
「12月10日、球団と小川は今後の交渉日程、お互いのスケジュールを確認するだけで会っています。小川も残留するかどうか迷っていましたが、結論をいつまでも先延ばしするのは迷惑だということは分かっていました」(球界関係者)
12月15日、ヤクルト側が小川に年俸アップを約束し、同18日に出来高払いなど詳しい内容を伝えたという。18日後の両者の交渉について、先の関係者がこう続ける。
「エースとしてチームに貢献してほしい、必要な戦力だということを伝え、小川の表情も変わったと聞いていますが」
ヤクルト側は23日の交渉で残留の返事をもらえると思っていたそうだ。25日にまた会談する予定だが、同日はヤクルト球団の仕事納めの日でもある。ここでまた結論が出なければ、「年越し」は避けられない。球団は小川に代わる先発の柱となる投手を探さなければならないが、1月に入ってからでは国内トレードの成立は難しいだろう。
「小川はヤクルト以外の球団からの交渉を待っているのではないか。他球団の話を聞くことでヤクルトの誠意も見えてくるし、自身の投手としての評価も分かるので」(ベテラン記者)
FA権を行使した理由は、優勝へのこだわりだと言われている。
ヤクルトは選手間の関係も良好で、雰囲気も明るい。だが、交渉が長引けば、残留後の対人関係にも影響しかねない。何よりもまた、自主トレ期間も短くなり、21年シーズンの成績にも響いてくる。「年越し」は小川にとっても良策ではない。(スポーツライター・飯山満)