ベイスターズは、今シーズンFA権を獲得したカープの田中広輔の動向にも注視していたと報道されたていたが、カープ愛を貫き残留したことで計画は白紙に。今シーズンの二遊間は、外野が佐野恵太、梶谷隆幸、タイラー・オースティンで埋まっていた際は、セカンドにネフタリ・ソトが入るケースもあったが、ホセ・ロペスの退団により来シーズンはソトがファーストへ固定される公算が高いことを踏まえ、田中広輔への調査と繋がったと考えられた。
このことからも、ベイスターズのポイントの一つと明らかになっていた二遊間の補強に、プロテクトリストから外れていた田中俊太はうってつけの存在。当初の兄・公輔からターゲットは変わったが、歳も27と若く、兄とプレースタイルの似た弟の獲得は朗報だ。
過去3回のジャイアンツからの人的補償は、ベイスターズにとって概ねプラスに作用している面もある。
2006年、チーム最多の10勝を挙げた門倉健との人的補償で現ソフトバンク監督の工藤公康を獲得。初年は先発で7勝6敗、翌年は未勝利ながらも、2009年はリリーフに回り46試合に登板し2勝3敗。大ベテランならではの経験をチームに伝授し、暗黒時代真っ只中に“ハマのおじさん”として話題も集めたことも含め、貢献度は高かった。
2011年は、村田修一がジャイアンツへ移籍し、ベテラン左腕・藤井秀悟を獲得。初年は6連勝を含む7勝、翌年には開幕投手も務め上げた。現在も球団広報兼バッティングピッチャーという稀な立場として、裏からチームを支える存在だ。
2016年には、山口俊の人的補償でベイスターズに平良拳太郎がやって来た。その活躍はオフに人的補償の話題になると、カープの一岡竜司と共に必ず成功例として出てくるほど。今やローテーションの中心で、来シーズンは開幕投手も狙える位置にまで成長した。
そして、今回の田中俊太は、地元・東海大相模出身で、ファンからも馴染み深い選手。三浦大輔新監督も、今季は二軍監督を務めていたことから「走攻守バランスが取れた選手だと思います」と評価。「地元神奈川出身ということもあり、横浜DeNAベイスターズの力になってくれることを期待しています。共に優勝をめざして戦おう!」とエールを送った。人的補償というネガティブなイメージを払拭する活躍をして、プレーし慣れた横浜スタジアムで田中俊太は再び輝く。
写真・取材・文 / 萩原孝弘