>>日本の「コロナ差別」に疑問? バカンス明けのドイツ、感染者急増も世間は冷静<<
その動画とは、今から何十年後かの未来という設定で、一人の老人男性が2020年のコロナ禍について語るというもの。動画の中で男性は「コロナの第2波が来たとき、私は22歳で毎日パーティーをしたい年頃だった」「でもあの頃、私たちは新型コロナウイルスと戦うためにソファの上に1日中いたんだ。私たちにとって何もしないことが武器だった。そんなふうに家でダラダラする人こそが英雄だった」「当時を思い出すと今でも笑えてくるよ」などと話し、過去の設定である2020年の冬を振り返る。動画は、コロナ禍で外出自粛など日々の暮らしに制限がかかりストレスを抱えている人々に対し、「家にいることは今年は特別なことである」と訴え、気持ちを少しでも前向きにしようという想いで、ドイツ政府名義で発信したそうだ。
動画は、1分30秒ほどの短いものだが、11月14日にドイツ政府の公式YouTubeチャンネルで公開されると、ドイツ国内のみならずヨーロッパを中心に拡散され、11月27日現在、109万回以上再生されている。ドイツ政府が公開した動画はドイツ語だが、有志らが英語字幕やスペイン語字幕などをつけてTwitterやFacebookに投稿し、それがドイツ以外の国でも拡散された。この動画を見た人たちからは称賛の声が寄せられているようだ。
「ドイツのSNSを見ると、『自分も何十年後かにこうやって振り返ることができたらなと思った。勇気をもらった』『何もしないことが英雄という言葉が心に響いた』などの声が挙がっています。動画は周辺国にも拡散されていて、とあるイギリス人男性は『家にいることを英雄に見立てるアイデアがすごいし、外出ができない毎日だけど前向きになれた。政府がこんなアイデアにあふれた動画を作っていることがすごい』とSNSでつぶやき、とあるスペイン人女性は『恐怖をあおらず市民にステイホームを呼びかけている、素晴らしい』とつぶやいています。在独日本人はこの動画が政府制作というところに驚く人が多く、最後の“当時を思い出すと今でも笑えてくる”という部分は『日本だったらたたかれてるね』と声をそろえます」(ドイツ在住日本人)
ドイツでは、政府が少し面白みを加えた動画を公開しているが、動画に対する批判の声はほとんど挙がっていない。第2波が到来しても、心に余裕がある点が大きいだろう。
ドイツは現在、レストランやバーは閉まり、大きなイベントも中止されている。しかしもともとドイツ人はお金を使わない遊びが得意だ。友人と集まるとなると「飲みに行く」という選択肢が多くなりがちな日本とは違い、公園でピクニックを楽しんだり、自宅に集まり料理を楽しんだりする。ロックダウンで集まれる人数の制限はあるものの、レストランが閉鎖し、イベントがないからといって不便さを感じている人は少ないようだ。
また、今年の春に訪れた第1波を乗り越えたという自信がある人が多い点も、ドイツ人が心に余裕がある理由の一つだろう。第1波では、周辺諸国に比べ、ドイツで医療崩壊はほぼ起きず、「ドイツは大丈夫」と思っているドイツ人が多い。政府のコロナ対策に不満を持つ人も少なく、ある程度の団結が取られ、それが心の余裕につながっているのだ。
「日本ではSNSを見ると政府のコロナ対策を批判する声が目立ちますが、ドイツではどちらかというと称賛する声の方が多いんです。周辺諸国に比べてまだ感染者が少なかった時期に2回目のロックダウンに踏み切ったことや、経済的な支援をいち早く決定するなど、特に政府のスピード感に信頼を寄せる人が多いですね。もちろん、一部で批判する声やメディアもありますが、少なくとも私の周りでは政府の方向性に心配するというより、安心している人ばかりです」(前出・同)
もうじき訪れるクリスマスはドイツ国民にとっては大事な行事の一つであるが、今年はひっそりと祝うことを受け入れている人が多そうだ。
記事内の引用について
BundesregierungのYouTubeチャンネルより
https://www.youtube.com/user/bundesregierung