現役時代西武(1982-1994,2010)、ダイエー(1995-1999)、巨人(2000-2006)、横浜(2007-2009)でプレーした57歳の工藤監督。今回の動画でチームの功労者に対する球団の扱い方をテーマにトークを展開した大久保氏は、その中で1994年オフにFAで西武を去った工藤監督が2009年オフに古巣復帰を果たした時の裏話を語った。
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工藤監督が横浜を退団した2009年は、西武の編成部に所属していた大久保氏。当時の球団はFAでチームを出て行った選手は呼び戻さない方針だったというが、指揮を執っていた渡辺久信監督が「工藤さんの引き際はライオンズのユニフォームを着させて終わらせてあげたい」と常々話していたこともあり、横浜退団が決まるとすぐに工藤監督の自宅まで足を運び交渉したという。
「編成部としての自分の立場をかけてでも、(年俸)2000万円は保証できるように頑張ります」と条件面について話すと同時に、「渡辺監督が今まで西武でご法度だった話を(覆してまで)、身を挺して工藤さんを獲るって話してます。他から(オファーが)きて行っちゃったじゃ(渡辺監督が報われないから)、男同士の気持ちを考えてください」と渡辺監督の“男気”をくんでほしいと頭を下げた大久保氏。工藤監督が「ありがとう、(渡辺)監督にもよろしく言っておいて」と受け入れたため、このまま入団するものと考えていたという。
ところが、その後工藤監督が一時電話に全く出なくなってしまったという大久保氏。しばらくの期間電話をかけ続けてようやくつながったが、そこで楽天から好条件でオファーが来ておりそちらになびいている旨を聞かされたため、急きょ電話翌日に会うことにしたという。
一夜明け工藤監督と会った大久保氏は、「渡辺久信と言う男の気持ちを踏みにじるんですか!『(大事なのは)条件じゃない、ありがとうデーブ』って言ってくれたじゃないですか!」と必死で説得。すると、熱意が通じたのか工藤監督が考え直すそぶりを見せたため、その勢いで渡辺監督も交えて3人で食事をする約束を取り付けたという。
後日開かれた食事会で渡辺監督が「ウチが獲らせてください。条件は(年俸)3000万円です、いかがですか?」と提案し、工藤監督も「本当にありがとうございます。何ができるかは分からないけど、精いっぱい監督のために頑張ります」と受諾したため工藤監督の西武入りが決定。大久保氏は紆余曲折を経ながらも交渉が成功した安堵から、その場で思わず男泣きしたと語っていた。
大久保氏はこの他にも、編成部時代に本気で獲得を狙っていたというある現役選手や、チームの功労者の扱いに対する自身の見解などについて動画内で語っている。
今回の動画を受け、ネット上には「当時はすんなり復帰決まった感じで報じられてたのに裏でそんな攻防戦があったのか」、「西武復帰へ向けての男気と熱意が伝わる感動的な話だ、最終的に受け入れた工藤監督も立派な男だよ」、「楽天も食指伸ばしてたのは初耳、もし行ってたら今頃楽天を指揮してた可能性も…」、「最近古巣復帰する選手が増えてきてるのはこれがきっかけでもありそう」といった反応が多数寄せられている。
工藤監督は第1次西武時代に計113勝をマークし、最優秀防御率を3回(1985,1987,1993)、最高勝率を3回(1987,1991,1993)獲得した先発左腕。渡辺監督は同時期に共にプレーした経験もあり、工藤監督を球団の功労者と考え復帰を切望していたようだ。
2009年オフの工藤監督以降、松井稼頭央(2017年オフ)、松坂大輔(2019年オフ)などFAやポスティングでチームを去った選手が復帰するケースが増えてきている西武。今回大久保氏が明かしたエピソードは、球団にとっての大きなターニングポイントなのかもしれない。
文 / 柴田雅人
記事内の引用について
大久保博元氏の公式ユーチューブチャンネルより
https://www.youtube.com/channel/UCKa1VlSq1WwdSQWv4JFdgxg