原辰徳監督は「もう一つ、本来の小林に戻っていなかった」(代表取材)と説明していたが、ルールでは10月28日まで一軍再登録することはできない。試合前の優勝マジックナンバーは「8」。小林は一軍メンバーとして、優勝・胴上げの輪からも弾き出されたことになる。
「大城、炭谷が各投手と息の合ったところを見せ、小林が故障で離脱していたペナントレース前半、岸田も『第3捕手』として奮闘していました」(スポーツ紙記者)
小林の故障が癒えて、再登録されたのは9月18日。復帰後の打撃成績は0割5分6厘であり、守備で貢献してきたとは言え、代打起用も可能な岸田の方が戦力になるのかもしれない。今後の小林のモチベーションを懸念する声も多く聞かれた。
プロ野球OBが“選手心理”をこう語っていた。
「怪我でチームを長く離れ、それだけでも疎外感みたいなものを持ってしまうのに、優勝目前での二軍落ちですからね。精神的にこたえたと思います」
また、10月26日のドラフト会議で「巨人が捕手を指名する」との情報も交錯している。こうした状況を考えると、一時期、噂になった放出説まで再燃してきそうである。
>>“被害者”は巨人・中川だけじゃない?直後に大炎上したベテランも、リリーフカーを巡る珍事が起こるワケは<<
もっとも、今回の降格を前向きに捉える声もあった。
「日本シリーズですよ。ペナントレースの終了間際になっての二軍調整と言えば、それしかないでしょう」(球界関係者)
パ・リーグは混戦状態が続いていたが、福岡ソフトバンクがそれを抜け出しつつある。2年続けて福岡ソフトバンクと戦うことになれば、マークしなければならないのは、盗塁王のタイトル獲得も濃厚になってきた周東佑京だ。
奇しくも、小林の登録が抹消された日、周東は5多数4安打と大当たりで、同日だけで3盗塁をマークしている。特に3打席目に放った三塁打だが、「普通の打者なら、二塁打」というライト線のゴロヒットだった。チームは今季最多の11得点を挙げたが、大量得点は周東の足が相手チームを攪乱させた結果とも言える。この駿足を封じ込めなければ、昨年の「日本シリーズ4連敗」のリベンジはない。
「巨人の一軍捕手の中で一番肩が強いのは、小林。シリーズ対策のための再調整だということがきちんと伝わっていればいいんですが」(前出・同)
昭和40年代の巨人を知る年長のプロ野球解説者や関係者によれば、故・川上哲治監督はパ・リーグ優勝チームの対策を講じるため、正捕手だった森昌彦(現・祇晶)氏をベンチから外し、スコアラー同様、視察に行かせたこともあったそうだ。
打撃好調の大城、若手投手を巧みにリードする炭谷、成長株の岸田。今季、故障で全く良いところがなかった小林にとって、日本シリーズは“ラストチャンス”となりそうだ。(スポーツライター・飯山満)