珍しい事態が起こったのは、「7-4」と巨人3点リードの9回裏2死の場面。この回、巨人は5番手・堀岡隼人が3失点、6番手・宮国椋丞が1失点と阪神に追い上げられていたため、原辰徳監督は守護神・デラロサの投入を決断。ところが、場内にデラロサの名前がコールされる中、リリーフカーで現れたのはなぜかデラロサではなく中川。リリーフカーから降りた中川はマウンドに上がることなくそのままベンチ裏へと下がり、その後再度リリーフカーでデラロサが登場した。
デラロサが無失点で抑え勝利した試合後、原監督は「僕と宮本(和知投手チーフコーチ)の間では意思疎通はできていたんだけど、その次に送った人が『中川』って言ったみたい」とベンチの伝達ミスが珍事の原因だったとコメント。同時に、「中川に罪はない。ベンチが悪い」と予期せぬ事態に巻き込まれた中川をかばった。
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コールされていない投手がリリーフカーで登場したという今回の一件。ネット上には「リリーフカーが別人乗せて登場なんて初めて見た」、「過去にこんな例他にあるのか?」といった驚きの反応が多数寄せられているが、リリーフカーが関係する珍事は実は以前にも何度か起こっている。
今回の一件と同じく別人がリリーフカーで登場したのが、2011年4月27日のロッテ対オリックス戦。7回裏無死満塁のピンチでオリックスは小林雅英を起用するも、福間納コーチがブルペンに交代選手の名前を伝え間違えたことで、小林ではなく吉野誠がリリーフカーで登場。吉野はリリーフカーから降りてベンチに下がり、本来乗るはずだった小林はベンチ裏から走ってマウンドへ上がった。なお、この珍事が影響したのか、登板後の小林は押し出し四球を与えた上、3点三塁打を浴びるなど散々な投球だった。
別人がリリーフカーで登場後、車から降りずに乗ったままブルペンまで引き返す事態が起こったのが2012年8月30日のロッテ対楽天戦の7回表。この回が始まる前、ロッテは先発・小野晋吾が続投し投球練習を行っていたが、ブルペンに小野の続投が伝わっておらず南昌輝がリリーフカーで登場。投手交代が告げられていないためマウンドに上がることはできない南は、リリーフカーに乗ったままブルペンへ帰還。結局、その後試合が終わるまで南は起用されていない。
2013年9月26日阪神対DeNA戦では、DeNA側の采配が阪神側の珍事を引き起こしている。8回表一、三塁、打者は松本啓二朗という場面で阪神は松田遼馬に代え加藤康介を起用するとブルペンに連絡していたが、松本に代打が送られたため一転して松田は続投。ところが、連絡役の中西清起コーチがブルペン側への連絡を失念していたため、起用が取り消された加藤を乗せたリリーフカーが一度右翼から登場し、その後バックで引き返すという事態が起こっている。
中川の件も他の3件も、原因はベンチ側の伝達ミスで起きたリリーフカーを巡る珍事。巻き込まれた選手の投球に悪影響が及ぶ可能性もあるため、巨人首脳陣は今後同じことが起きないよう気を配る必要があるのかもしれない。
文 / 柴田雅人