>>ストライクど真ん中の球がなぜかボールに! 西武・渡辺が「やってられない」と激怒した大誤審、開き直った審判の末路は<<
2018年から導入されているリクエスト制度は、際どい判定で試合が混乱するのを防ぐ意味合いを持っている。この制度がまだなかった今から30年前のこの時期には、審判の判定を巡り大騒動が勃発した試合がある。
1990年6月23日、西武球場(現メットライフドーム)で行われたロッテ対西武の一戦。ロッテは7回表終了時点で「6-5」と1点リードしていたが、7回裏に2死二、三塁のピンチに。この場面で投手・園川一美がセットポジションで静止せずに投球してしまい、球審の高木敏昭審判はボークを宣告。これにより三塁ランナーがホームインし、不運な形で同点を許してしまった。
すると、ボークの判定を受けたロッテ・金田正一監督が「何であれがボークや!」と叫びながらベンチから猛ダッシュ。高木審判につかみかかると、高木審判の右腕を殴る暴挙に出た。
暴行を受けた高木審判は即座に退場を宣告するも、金田監督はさらに蹴りを2発お見舞い。その後も制止されながら怒りをあらわにする金田監督に対し、高木審判も自身のマスクや帽子を地面にたたき付けながら応戦した。
なおも怒りが収まらない金田監督は、マウンド上の園川からボールとグローブを奪い取ると「ちょっと来い!」と審判団を招集。その後集まった審判団の前でボークのシーンを自ら再現し判定に抗議した。
それでも審判団が相手にしなかったため、金田監督は選手全員をベンチに引き揚げさせ試合のボイコットを示唆するというまさかの行動に。慌てたロッテ関係者がなんとか金田監督をなだめたことで実際にボイコットには至らず、試合は8分間の中断後に再開されたが、ロッテはその後「6-13」の大敗を喫する結果となった。
なぜここまで判定に抗議したのかについて、金田監督は試合後の報道の中で三塁コーチャーを務めていた西武・伊原春樹コーチの行動によるものと主張している。金田監督によると、園川がボークを宣告される直前、伊原コーチは三塁コーチボックスから本塁方向へダッシュし、あたかも三塁ランナーがホームスチールを仕掛けたかのように見せていたとのこと。ただ、三塁塁審を務めていた五十嵐洋一審判によると、「伊原コーチはボークを宣告した後に出てきていた」という。
最後まで主張が認められなかった金田監督は、パ・リーグ連盟から「罰金100万円+出場停止30日」という重い処分を課されてしまう。また、禍中の審判となった高木審判が「こんな奴がいるところで審判ができるか!」として同年シーズン途中で辞職するなど、非常に後味の悪い結末となっている。
現代のプロ野球でも、審判の判定に納得がいかない監督が退場覚悟で抗議をするシーンはしばしば見られる。ただ、これだけの騒ぎをもたらすような監督は、もうこの先お目にかかれないのではないだろうか。
文 / 柴田雅人