本拠地・メットライフドームで行われた中日戦で、注目の松坂大輔が3番手としてマウンドに上った。先頭バッターには四球を与えたが、その後はノラリクラリと変化球を内外角に散らし、無失点に抑えてみせた。昨季まで在籍していた中日の元同僚たちは一同に賛辞を送り、松坂も笑顔でベンチに下がって行った。
しかし、辻監督だけは違った。試合後の共同会見で「松坂の開幕ローテーション入りは?」と聞かれるなり、
「いや、無理でしょう、まだ」
と、言い切った。さらに、「ここで1イニングしか投げられないぐらいだったら、無理だと思います。悪くはないけど、良い時の松坂ではない。下(二軍)の方でローテーションを組めるようになれば」とも言った。
その言葉の通りなら、開幕一軍メンバーから脱落したことになる。当の松坂は「今日は試合カンを取り戻す、バッターと対戦することで感覚を思い出す作業がメインでした」と球団を介し、投げ終わった直後の笑顔からややトーンダウンしたコメントを発表した。
話は、5月27日に遡る。同日、50球弱だが、松坂はブルペンでの投球練習を行っている。辻監督もそれを見守り、「しっかり放れている。これだけ投げられているというのは、肩のトレーニングができているから」と評価していた。この時点で“開幕ローテーション入りは確定”と思われたが、一週間余りで指揮官の評価はガタ落ちしたわけだ。
また、辻監督は「1イニングしか投げられないようなら」とも言っていた。松坂は2イニング以上の登板が予定されていて、故障個所である右膝が“悲鳴”を上げたのか。こんな情報も聞かれた。
「当初から1イニングの登板予定でした。右膝以外はほぼ万全なので、調整の一環で投げさせたんです」(球界関係者)
とは言え、辻監督は「二軍でローテーション入りすれば」とも語っていた。この課題をこなすのはちょっと難しそうだ。
松坂が復活勝利を挙げた2018年、その登板間隔は“特別待遇”だったと言っても過言ではない。森繁和監督(当時)が投手コーチなどに状態を聞き、登板イニング数も松坂と話し合っていた。ローテーション入りとは、「中6日」の間隔で投げ続けること。2、3度ならともかく、今年40歳になるベテランにそれを継続させるのはかなり厳しいと思うが…。
「辻監督の松坂評を聞いて、西武は優勝を狙うチームなんだと再確認させられた関係者も少なくありません。エコ贔屓、特別待遇はしないという宣言ですよね」(前出・同)
19-20年オフ、辻監督は松坂の西武帰還について、「男気を感じる」とも話していた。右膝は回復に向かっているという。7日のピッチングは結果だけ見れば、ゼロに抑えたのだから、一軍で投げさせようと思えばできないこともないだろう。あえて、「良い時の松坂ではない」と言い切ったのは、中途半端な状態で投げさせて恥をかかせたくないとする指揮官の温情かもしれない。(スポーツライター・飯山満)