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近鉄助っ人がスタンドで観客をボコボコに! 張本氏・ノムさんも心酔した好打者、前代未聞の凶行に及んだワケは

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張本勲氏

 新型コロナウイルスの影響で開幕延期が続いていたが、6月19日に開幕することが決定している今シーズンのプロ野球。同月2日からは練習試合も始まるなど、開幕へ向けた調整が本格化している。

 2日の練習試合ではDeNA・オースティンや西武・スパンジェンバーグなど、複数の助っ人打者が本塁打をマークしている。こうした助っ人はシーズンに入っても大暴れすることが期待されているが、今から約60年前にはある助っ人がグラウンドではなく観客席で大暴れした試合がある。

 1961年6月3日、西宮球場で行われた近鉄対阪急の一戦。阪急1点リードで迎えた5回裏、二塁の守備についていた近鉄・ブルームが突然守備位置から一塁ベンチ方向へ向け猛ダッシュ。この時点で当時の観客は「なんだなんだ?」と騒然となっていたという。

 一塁ベンチ横の金網を乗り越え内野スタンドに降りたブルームは、観客席にいた男性客の1人に突進。そのまま男性客の顔面を殴り付けると、倒れ込んだ男性客をさらにスパイクで踏み付けるという暴挙に出た。

 試合中の選手が突然観客を暴行するという事態に球場はさらに騒然となる中、駆け付けた警備員や周りの観客が必至にブルームを制止。ただ、ブルームの怒りは収まらず、その直後に退場処分となった後もベンチ裏で男性客へ暴言を吐き続けていたという。

 球界では後にも先にも例がない“観客への暴行”を犯してしまったブルームだが、なぜこのような事態を引き起こすに至ったのかはその後の報道で判明する。当時の報道によると、殴られたのは兵庫県内に住む阪急ファンの男性客だったが、この男性客が実は試合中のブルームに対し「ヤンキー・ゴー・ホーム!(アメリカ人は帰れ!)」と人種差別的なヤジを飛ばしていたとのこと。これを聞いたブルームは「アメリカ人にとっては許せない言葉」と激怒し凶行に及んでしまったという。

 暴行により右手などに怪我を負った男性客は、当初ブルームに対し刑事告訴も辞さない構えだったというが、後に自身の言動を反省し被害届は出さなかったとのこと。ただ、近鉄側はブルームに対し「出場停止7日間+罰金5万円」という処分を下している。

 ここまでの経緯を見ると粗暴な助っ人という印象が強いブルームだが、気さくな一面も見せた人物ともいわれている。ブルームは2年連続(1962-1963)で首位打者に輝くほどの好打者だったが、打撃のコツを聞きに来た張本勲(当時東映)や野村克也(当時南海)には親身になってアドバイスを送っていたという。

 また、前後は不明だが今回の一件と同じ1961年には、妻の退院のため訪れた病院で輸血をしなければ命が危ない女の子の赤ちゃんがいるという話を聞き、自ら輸血を申し出て女の子の赤ちゃんの命を救っている。なお、それから30年後の1991年12月には、母親となった女の子が自身の赤ちゃんを連れて、プロ野球OB戦出場のため来日中だったブルームと再会を果たすという感動的な出来事があったことも広く伝えられている。

 今回取り上げた出来事からは約60年が経過しているが、観客のヤジが選手を激怒させたり、委縮させたりといったことは現在でも少なくない。今シーズンは当面無観客で行われる予定のためしばらくはヤジがないことが予想されるが、観客を入れた試合が解禁された後も心ないヤジが飛ばないことを願いたいところだ。

文 / 柴田雅人

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