「深く野球文化に染み込んでいるから、この慣習をやめるのはとてつもない難題だ」
サンフランシスコジャイアンツのゲーブ・キャプラー監督の発言だ。野球選手がプレーの合間にツバを吐くことがある。その行為を新型コロナウイルスの感染・拡大防止のため、禁止すると通達されている。それに対し、同監督が地元ラジオ局のインタビューで、「難題だ~」とボヤいたのだ。
「ユーモア半分といったところでしょう。キャプラー監督に対する批判は今のところ、出ていません」(米国人ライター)
しかし、キャプラー監督が「日本のネクスト・メジャーリーガーたち」の交渉において、キーマンとなりそうなのだ。
「巨人のユニフォームに袖を通したのは、2005年のシーズン。でも、日本の野球スタイルが合わず、シーズン途中の7月に自ら退団を申し出て、帰国しています」(スポーツ紙記者)
巨人時代の打率は1割5分3厘(38試合)。しかし、帰国後は2010年シーズンまで現役を続けており(07年はマイナー指導者)、第3回WBCでイスラエル代表監督、同4回大会での予選中のコーチ、フィリーズ監督(2季)に就くなど、“活躍”していた。計12年、米帰国後も5季(05年途中も含む)、メジャー生活を送ったとなれば、日本球界に好印象を持っていないと思うのは当然だが、そうではないという。
「WBCでイスラエルを指揮していた時、日本の野球を参考にしています。けっこう、日本の選手のことも詳しいですよ。大谷が米球界に挑戦しようとした17年オフ、ドジャースのファームディレクターを務めていましたが、『日本ハム球団が、米球界志望の選手をサポートしている』と現地メディアに伝えたりもしていました」(前出・同)
今オフの米球界挑戦が伝えられる巨人・菅野、日本ハム・有原などについても「詳しい」と見るべきだろう。在籍した巨人とのルートは完全に切れているそうだが、こんな声もあった。
「メジャーでも指折りのボディビルダーとして知られていました。シューズメーカーの米CMにも出演したことがあり、独自の情報網を持っているようです」(特派記者)
キャプラー監督はフィリーズ指揮官時代、まだ準備を始めていないリリーバーを登板させ、試合を混乱させたこともある。しかし、チームリーダーの「改善要求」を聞き入れる一面もあり、SFジャイアンツの監督に招かれた理由は、データ解析に優れていたからだという。「日本で通用しなかったのは自分のせい」とハッキリ言い切る“度量”もあり、英語を話せない中南米出身の選手に対しても、「異国で野球をやる気苦労」を自身の体験談として聞かせる優しさもあるそうだ。
「日本人選手が米球界に行って苦労するのは、練習時間など野球観の違いです。日本のネクスト・メジャーリーガーが交渉をスタートさせた時、日米の野球観の違いを分かっていることをアピールしてくるのでは?」(前出・同)
キャプラー監督の存在はNPBにも知られている。ひょっとしたら、グラウンドにツバを吐くシーンについてコメントしたのも、日米の野球観に詳しいことを日本にアピールしたかったのかもしれない。(スポーツライター・飯山満)