脅迫文には「お前の教え子の親からの依頼で行動を開始する」「教え子を侮辱したから復讐する」「個人情報をあばき、最低の教師だと名指しして掲示板に投稿する」「自宅や家族に危害を加える」といった内容が、A4版1枚にびっしりと書かれていたそうだ。最後に、中止してほしければ現金300万円を郵送するように指示があった。送付先はタイ・バンコクの住所だ。
送り主の名前はなく、あて名はボールペンの手書き。すでに退職した人や死亡した人も含まれており、少なくとも44都道府県に郵送された。
現金の送付先であるアパートの一室には、一人のタイ人女性が住んでいた。彼女は知人女性に頼まれて郵便物の受け取りを引き受けたといい、その知人女性は日本国籍の夫Aから頼まれたと話した。なお、彼女は受け取る荷物の中身を知らされてはいなかったそうだ。
Aは一体何者なのか?彼はタイで代行業を営んでおり、荷物の引き受けを行っていた。日本で言えば「コンビニ受け取りサービス」のような形で、自宅で荷物を受け取れない人のための仕事だ。今回の事件に関しては「2か月ほど前にメールで依頼があった、中身は履歴書」「依頼人の名前はマツオ・キヨミ」と話した。届いた荷物は香港の住所に送るようにという指示があったが、荷物は一つも届かなかったという。
インターネットが既に普及した2015年に、わざわざ手間がかかる郵送を用いて2000通以上も脅迫文を出した犯人。一体何者で、どうやって情報を手に入れたのか。
当時の報道で、脅迫文の一部が公開されたのだが、あまりに珍妙な文面に「犯人は外国人ではないか」という声がネット上で上がった。「お前の家に投石 夜中に怖い電話」「私たちは追い込みを続ける私たちは」という違和感ある文章が並んでいたのだ。さらに、句読点は一切なく、文節の頭に一字空けがなかったという。
近年、日本では個人情報の流出事件が相次いでいるが、その情報が中国の闇市場で出品されたという噂もあった。2000通以上の脅迫文を「マツオ・キヨミ」なる人物が一人で準備したのか、それとも組織的に日本人をターゲットにしたのだろうか。結局、犯人の手掛かりは2020年4月現在も見つかっていない。