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本好きオヤジの幸せ本棚(11)

◎オヤジ人生にプラス1のこの1冊
『流血のサファリ』(上・下)(デオン・マイヤー/大久保寛=訳 RHブックス・プラス 各903円)

 ハードボイルド小説の本場がアメリカであることに異論を挟む人はいないだろう。1920年代にダシール・ハメットがデビューして以来、レイモンド・チャンドラー、ミッキー・スピレインなど優れたミステリー作家が、孤独でタフな私立探偵を描き続けてきた。しかし近年はこのタイプの小説は時代遅れになってしまったようだ。民間の探偵が独りで立ち向かえるほどこの世の悪の実態は単純ではない、と本国アメリカの読者が気付いてしまったからだ。
 けれどもハードボイルド精神がこの世から消滅することはない。本書は南アフリカの作家が2007年に発表した小説の邦訳版である。まさしく孤独でタフな男の戦いを描いている。
 主人公レマーは大手警護会社に雇われているフリーランスのボディーガードだ。企業コンサルタントの女性エマを守ることになった。失踪した兄の行方を追うことが何者かの怒りを買ったらしく、襲撃を受けたのだ。レマーは彼女の兄捜しを手伝いつつ何者かの正体も突き止めなければならない。その任務は次から次と彼に試練を与えるのだった…。レマーもエマも白人だが、南アフリカ全体はもちろん様々な人種が入り乱れている。加えてレマーの狂気と正義感を内包したキャラクターも独特。複雑な社会と複雑な個人の内面が火花を散らす本作は少しも時代遅れではなく、現代性に満ちている。
(中辻理夫/文芸評論家)

◎気になる新刊
『地球博物学大図鑑』(スミソニアン協会監修 デイヴィッド・バーニー/東京書籍・9975円)

 米国スミソニアン国立自然史博物館の開館100周年記念に出版された一生モノの大図鑑。鉱物、岩石、化石から微生物、菌類、植物、動物に至る5154種が収められている。“本”という形でこそ所有したい。

◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり

 ブラジルW杯アジア最終予選にEURO2012と、今月はサッカーが熱い。そこでスポーツ雑誌をご紹介しよう。『スポーツグラフィックNumber』(文藝春秋/550円)は“グラフィック”の名にふさわしい豊富な写真と、選手へのインタビュー、評論家やジャーナリストによる細かな分析で名高いが、サッカーを特集した号は特に面白い。
 6/21号がEURO2012、続く7/5号が日本代表ブラジルへの道と、サッカーの季節を大々的に扱った特集が続く。EURO特集では、元日本代表監督イビチャ・オシム氏が登場し、見どころを解説。このしかめ面をした頑固そうな爺さんはNumberサッカー特集の“顔”でもあり、独自の哲学に基づく予想は読み応えがある。
 7/5号には、今やイラク代表を率いて最終予選で日本に立ちはだかる、これまた元日本代表監督・ジーコ氏の記事が掲載される予定。
 サッカーを“深掘り”するには、欠かせない雑誌だ。(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意

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