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出てこい! ニッポン埋蔵金 発掘最前線(9)

 第2次大戦末期、シンガポールから国内に持ち込まれた大量の金塊とダイヤモンド(推定時価約100億円)は、飛行機で十日町まで来て、鯨波で一時保管された後に八石山へ運ばれたようだ。これを計画、指揮したのが、終戦間際に首相を務めた小磯國昭だという。小磯は、なぜ八石山を選んだのだろうか。
 本人は栃木県宇都宮の生まれだが、実は、妻の馨子は柏崎の名家の出身である。先祖は江戸時代後期に、現在は原発のある刈羽に近い荒浜で、北前船による交易をはじめ、蝦夷地のニシンなどを扱って富を築いた豪商だった。維新後は士族の階級を与えられていて、父の牧口義方は県議会議員、柏崎銀行頭取、荒浜村村長を経て、明治30年代に衆議院議員を2期務めている。
 ただ、そのことと直接関係があるのかどうかはわからない。というのは、小磯本人が陸軍大学校時代に八石山に登ったことがあり、周辺の地理に明るかったからだ。

 さて、八石山周辺での調査が始まったのはごく最近のこと。埋蔵金コーディネーターのM氏が、三重県のN氏が握っていた極秘情報を入手し、広島市の資産家K氏から資金提供を受け、プロジェクトが立ち上がった。そして第1次発掘が行われたのは2000年の夏のことだった。
 M氏は北海道の出身で、かつてはトンネルの掘削を専門とする工事会社を経営していたが、たまたま道北の美幌町の旧日本海軍航空基地跡に、終戦間際に隠された貴金属類があることを知り、発掘調査に関わったことからこの道に入った。その調査も継続中だが、地方にいてはなかなか大きなプロジェクトが組みにくいので、30年ほど前に上京してからは、情報の収集とネットワークづくりに奔走している。
 筆者のもとにもちょくちょく顔を出し、情報交換をしていくのだが、驚異的といえるほど多様なアンテナを張り巡らせている人で、外国製の各種探査機の輸入販売を行うアイメックストレーズという会社の肱岡氏を筆者に紹介してくれたのもM氏だった。
 あるとき「オレのような者を何と言うんだろうね」と聞くので、付けてあげた肩書きが《埋蔵金コーディネーター》である。間違いなく、日本に1人しかいない。

 M氏はかなりの重量級。膝に障害があるため、500メートル程度の山の中腹とはいえ、登山は相当にこたえたようだが、ヘリを使って小型の重機を上げ、数日間にわたって発掘を行った模様である。しかし、どうやらポイントを外したとみえ、1回目は成果なく終わった。
 報告のために、M氏が広島へ帰る途中のK氏を伴い、わが家の近くまで来てくれたのは記憶しているが、このときの話の内容を、実をいうとあまりはっきりとは覚えていない。筆者はそのころ、同じ旧日本軍の隠匿物資を探す『Tプロジェクト』に没頭していて、他のことは頭に入らなかったのだ。柏崎の件にじっくり耳を傾けたのは、ずっと後のことだった。

 M氏が次の調査になかなか踏み出せなかったのは、前回の出資者のK氏が他界し、発掘費用の工面ができなかったからだ。筆者のトレジャーハンティングは、自ら汗を流し人力で掘るのを基本にしているから、大してカネは掛からないが、老齢のM氏の場合はそうはいかない。人を使い、機械力を導入すれば、どうしても出費が多くなる。
 昨年の秋ごろになって、ようやくM氏が柏崎の第2次調査を口にするようになった。新しい出資者が現れて資金のめどが立ったからだ。筆者は、こちらで人手も確保して協力するので、重機を使わない方法も考えてみては、と何度か提案し、ある程度は受け入れてもらっている。

 ただ、次は絶対にポイントを外すわけにいかない。だから、より高性能の探査機が必要になる。それを肱岡氏が手配中だが、ドイツから取り寄せるのに500万円ほど掛かってしまう。費用がかさむのは仕方のないところだ。
 間もなく探査機も届くころで、春になり雪が解けたら、まずは機械で埋蔵ポイントを探り、入梅前には発掘というスケジュールになるのではないかと思う。うまくいけば、この夏、新潟の山中に歓びの声が上がるかもしれない。

 もちろん、北陸某県で中断中の『Tプロジェクト』同様、発見されたものの由来については十分に調査し、わが国が所有権を主張できないものであるならば、当該国に返還するなど、しかるべき措置が取られなければならない。
 おそらく、財宝の隠匿埋蔵から今年でちょうど70年が経過する。戦後処理に無頓着な日本の現政権が、これをどのように扱うのか、別の意味でも興味がある。

トレジャーハンター・八重野充弘
(やえのみつひろ)=1947年熊本市生まれ。日本各地に眠る埋蔵金を求め、全国を駆け回って40年を誇るトレジャーハンターの第一人者。1978年『日本トレジャーハンティングクラブ』を結成し代表を務める。作家・科学ジャーナリスト。

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