先頭打者で迎えた3回表の第1打席は、今月支配下登録されたばかりの坂本工宜にバットを折られてファーストゴロ。1死二、三塁のチャンスで回ってきた4回表の第2打席では、戸根千明が投じた6球目のスライダーに見逃し三振を喫した。
7回表の第3打席でも、桜井俊貴の前にセンターフライに倒れ、裏の守備からベンチに退いたイチロー。守備では“レーザービーム”と称される強肩で球場を沸かせる場面もあったが、バットでは最後まで快音を響かせることはできなかった。
試合後の報道では、スコット・サーバイス監督が開幕戦でのスタメン起用を示唆したと伝えられているイチロー。状態が状態なだけに、ネット上からは「これじゃ開幕戦も厳しそう」、「やっぱり1年のブランクは大きいのか」、「これ以上打てないイチローは見たくない」といった不安の声が数多く挙がっている。
ただ、今現在の状態が絶不調でも、開幕戦の結果がどうなるかはまだ分からない。百戦錬磨のプレイヤーであるイチローは、これまでも度々逆境を跳ね返してきたからだ。
今から遡ること11年前の2008年。この時のイチローはオープン戦で26打席連続ノーヒットと不振にあえいだが、シーズンでは「打率.310・6本塁打・42打点・213安打」と出色の成績を残している。
また、翌年のWBCではそれまで「打率.211」と苦しむ中、韓国との決勝では4安打をマーク。最後の4安打目が日本に何をもたらしたのかは、今さらここで語る必要もないだろう。
追い込まれれば追い込まれるほど、自らの真価を証明してきたイチロー。翌日に迫った開幕戦で、3度目の“逆転劇”を演じることはできるのだろうか。
文 / 柴田雅人