ボルティモア・オリオールズ戦後(6月22日)の会見で、ニューヨーク・ヤンキースのジョー・ジラルディ監督はそう言った。その目線は質問した米記者団ではなく、日本人メディアに対して向けられていた。
同監督の言う「カレ」とは、田中将大投手(25)のこと。田中はここまで15試合に登板し、リーグトップタイの11勝(2敗)をマーク。同日もクオリティ・スタート(6回を3失点以内に抑える)に成功したが、スプリット、スライダーともに精彩を欠いていた。
「前回登板のとき(17日/ブルージェイズ戦)から『疲れ』が出ていました。田中は登板3日前、熱のこもった投球練習をするのをルーティンとしていますが、前回登板ではそれを取り止めて、試合に臨んでいます。メジャー一年生ですし、この時期に疲れがピークに達したとしても決しておかしくはありません」(米国人ライター)
ジラルディ監督が「休養が必要」と言ったのも当然だろう。同時点では先発登板を一回飛ばすのか、中5日の間隔に余裕をもたせるのか、具体的な方法は明らかにしなかったが、田中の疲労は日本のファンに“失望”を与えるかもしれない。田中の先発が1日ずれれば、オールスター戦に影響が出るかもしれないのだ。
田中が米球宴に選ばれるのは、ほぼ間違いないが−−。
「今年の米オールスター戦は7月15日。2010年から制度化されたルールにより、前半戦最終ゲームに登板した投手は、自動的にオールスター戦での登板資格を喪失します」(前出・同)
その前半戦最後のゲームは、7月13日。「中5日」のローテーションを守っていけば、米球宴登板資格を喪失する同日の先発は、田中になるのだ。
「試合日程、移動等の理由もありましたが、田中の登板間隔は『中4日』になったり、『中5日』に戻ったりを繰り返してきました」(現地特派記者)
田中のここに至るまでの先発登板は、以下の通り。(表参照)
(試合日) (対戦チーム) (投球回数)
4月4日 ブルージェイズ 7
4月9日 オリオールズ 7
4月16日 カブス 8
4月22日 レッドソックス 7.1/3
4月27日 エンゼルス 6.1/3
5月3日 レイズ 7
5月9日 ブルワーズ 6.1/3
5月14日 メッツ 9
5月20日 カブス 6
5月25日 ホワイトソックス 6.2/3
5月31日 ツインズ 8
6月5日 アスレチックス 6
6月11日 マリナーズ 9
6月17日 ブルージェイズ 6
6月22日 オリオールズ 7
田中の次回先発が「6月29日」と発表された。「休養が必要」とされた22日の登板から数えて“中6日”となる。ヤンキースはア・リーグ東地区3位、同時点で首位・ブルージェイズとのゲームは「3」。この戦況からして、ローテーションから1回外すことはできなかったが、通常の「中5日」よりも1日多く間隔を空けさせた。
この6月29日から“規則正しく”、「中5日」の間隔を守ると、7月5日、同11日が登板日となり、15日の米球宴を迎える。しかし、「中6日」でまわると、7月6日、13日が登板日となる(雨天中止を除く)。そう、7月13日に投げれば、田中は自動的に球宴登板の資格を失う…。
「田中は95年の野茂英雄氏以来の球宴先発の可能性も伝えられています。でも、2年前の米球宴でひと波乱起きています。『球宴登板の資格喪失』を逆手に、ヤンキース、タイガース、ジャイアンツなど6球団が主力先発投手を臨時登板させ、球宴での登板を意図的に回避させたんです。たいした怪我でもないのに主力打者を故障者リストさせ、また、バカンスを理由に球宴を辞退した選手もいました」(前出・米国人ライター)
2年前、ヤンキースにはCCサバシアを救援回避させた“前科”があるそうだ。4月には先発投手5人中3人を離脱させ、苦しいスタートとなった。田中を温存させるため、球宴前の最終ゲームに投げさせてくる可能性はむしろ高いと見ていいだろう。
主力選手を意図的に温存させるやり方については、NPBもペナルティーを課すなどして再発を防いでいる。アメリカでも球宴の在り方そのものを見直す声も出ているそうだが、田中の登板日は“要チェック”である。