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話題の1冊 著者インタビュー 福澤徹三 『忌談3』 角川ホラー文庫 480円(本体価格)

 −−今作で忌談シリーズも3作目になりました。

 福澤 1作目を書くときに、担当編集者から「普通の怪談実話はありふれているから、アンダーグラウンドに特化した怪談はどうですか」と提案されたんです。面白いアイデアだと思ったんですが、取材が大変なので、それだけで1冊書くのは難しかったんです。そこでアウトローや夜の世界だけでなく、心理的に厭な話や不気味な話まで間口を広げたわけです。怪談実話は本来、超自然的な現象が軸だと思っているんですけど、この本は「忌まわしい」と感じられるものなら何でも一緒くたにしています。ほとんど苦し紛れで始めたシリーズなのに、ここまで続くとは思わなかったです。

 −−どうやって話を集めているんですか?

 福澤 今回はネタ不足に悩んだ揚げ句、担当編集者と大阪に取材へ行きました。そこで一般の方から作家まで一堂に集めてもらって、同業者からもネタを集めるというアコギなことをやりました(笑)。普段は地元の飲食店で取材することが多いです。ただ自分が酔っちゃうと話を聞くどころじゃなくなるし、長年取材をしてるんで、僕の顔を見るなり「もう怖い話はないよ」なんて顔をされます(笑)。時には一席設けたりもしますが、収穫がない場合もしょっちゅうだから、接待費がばかになりません(笑)。

 −−地元の場合は、それが起こった場所を通ることもあるわけですね。

 福澤 心霊現象が起こった店で飲んでいることもあります(笑)。でも商売柄、怖がっていられませんし、取材した話を鵜呑みにしているわけではないです。超自然的な現象に対するスタンスは中立なので、肯定も否定もしません。取材させていただいた方の意見は尊重しますが、あくまで聞き書きであって、真偽を検証する対象ではありませんから。ただ取材を続けていると、本当に奇妙な話に遭遇することがあります。そういう話を聞いたときは、やっぱり怖いですね。

 −−文章にする際に気を付けている点はありますか?

 福澤 必要以上に怖がらせないことでしょうか。感嘆符は使わず「ギャーッ」というような擬音も最低限に抑えています。心霊的な何かが出現する場面も淡々とした描写なので、物足りないという読者もいますが、僕自身が煽られると興ざめするたちなので…。そういう意味では大人向けかもしれませんけど、本当は小、中学生に読んでほしいですね。できればトラウマになっていただくと、思いやりのある大人に成長するんじゃないかと(笑)。
(聞き手:本多カツヒロ)

福澤徹三(ふくざわ てつぞう)
 1962年、福岡県生まれ。デザイナー、コピーライター、専門学校講師を経て作家活動へ。『すじぼり』(角川文庫)で第10回大藪春彦賞受賞。

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