商工ローン業界最大手だったSFCG(旧商工ファンド)が今年2月23日、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、事実上倒産した。
東証1部上場企業ですら倒産の荒波に飲み込んでしまうこの厳しい経済情勢においては、多くの金融業者が大変な苦戦を強いられている。中小零細業者の中には貸金業に見切りをつけ、廃業を決めた業者も続出しているほどだ。
ところが、百年に一度といわれるこの大不況にもかかわらず、「元手はほとんど掛からない上に絶対に取りっぱぐれはない」とまさに我が世の春を謳歌している裏金融業者が存在するという。さっそく現場に潜入した。
問題の業者は千葉県の郊外に店を構えていた。JR千葉駅から成田線に乗り換えて電車に揺られること約20分、さらにそこからタクシーで10分ほど走ったところにその店はあった。店頭に「お金貸します」といった類の看板は一切掲げておらず、表向きは大型リサイクルショップ。店内には古着や釣り具、DVD、古本、アクセサリー、玩具などが雑然と並べられ、いかにも若者が好みそうな品ぞろえだ。
店内中央にあるレジまで進むと、レジ横には、商品券やプリペイドカードを陳列したショーウインドーがあった。しかし、少し様子が変だ。上から2段目の棚には中古のファミコンソフトが並べられており、付けられていた値札を見て絶句した。左から順に1万円、3万円、5万円、10万円、15万円、20万円、30万円…と金額が上がっていき、最高額は何と50万円だった。とっくの昔に生産が終了し、いくら入手困難になったとはいえ、箱も説明書もない中古ファミコンソフトが1本数十万円とは尋常ではない。
店の真の狙いは何か?
ファミコンソフトをショーウインドーから出してもらい手に取って見ると、狙いが透けて見えてきた。そこには“買取保証チケット”なるものが添えられていたのだ。“買取保証チケット”には、「高額買取保証 80%24万円買取 クレジットカードもご利用になれます」とある。
要するに、中古ファミコンソフトをクレジットカードで購入してくれたら、リサイクルショップ側が即座に買い戻して購入額の80%に相当する現金をキャッシュバックしますよという一種の金融であった。
改正貸金業法では「顧客1人に対する貸付額は他社融資分と合算して年収の3分の1以内」と厳しい総量規制がなされている。しかし、クレジットカードのショッピングについては割賦販売法が適用され、貸金業法の規制は受けない。よって、多重債務者でも関係なく利用できるのだ。
一方、リサイクルショップ側からすれば、販売代金は後日カード会社から振り込まれるので確実に回収できる。おまけに客にカードで「販売」した商品は、その場で「買取」をして戻ってくるので使い回しが可能。実質的に仕入れ原価ゼロをキープできるわけだ。
支払いを延滞していない限り、消費者金融でどんなに多額のキャッシングをしていようとも利用できるというカードショッピングの盲点を突いたこの“裏金融”。今後、消費者金融が「貸し渋り」「貸しはがし」をするにおよんで全国的に拡大する懸念もある。
◎ニセ中古品で騙せ!? 裏金融をハメようとする詐欺師との攻防
“ファミコンソフト金融”の取材を進めると、千葉県内の系列店では中古の財布、ブランドものの香水からフィギュアまで使い、同様の手口でカード換金を行っていることが分かった。それらの中古市場での取引価格を考えると、3万〜5万円といった値段は明らかに法外だ。
ところが、ここで頭の回る人ならこう考えるかもしれない。「例えば、中古ファミコンソフトを24万円で買い戻してくれるなら、どこかで同一種類のファミコンソフトを安く調達してきて、『この前カードを使って購入したものですが、買い取ってください』とだませば多額の現金が得られるのでは」。つまり、裏金融業者を逆にハメて現金をだまし取る作戦。ちょうど数年前に流行したニセ景品によるパチンコ景品換金詐欺のようなものだ。
ところが、敵もさる者。
「当店では、こういう商品の買い取りは販売当日限り有効、というよりも売り場責任者が買取窓口までお客様に同行します」
とのこと。要するに店員が“付け馬”をすることにより、だまされないように予防線を張っていたのだ。