こういった裏DVD店の“就職”斡旋には、ひとつのパターンがある。
所在なげに街をうろついている貧困層に対して、直接行われるのが通例なのだ。何も手配師のような人間があっせんするのは、肉体労働だけではない。
例えば、ある最近のわいせつ図画販売の公判における被告人=歌舞伎町の運び屋A氏の供述−−。
「パチンコ屋で仲良くなった男に、『いい仕事あるよ。DVDを運ぶヤバイ仕事なんだぜ』と誘われた」(供述ママ)
また別のわいせつ図画販売のB被告(=秋葉原で裏DVD店の社長を持ちかけられ2週間営業して逮捕)の供述−−。
「飲み屋で知り合って仲良くなった男から、6回目に飲んだときに、『俺の持ってるビルの一室で裏DVD店の店長をやらないか』と声をかけられた」
ちなみにA被告は、「区役所通りからコマ劇場まで自転車で一気に駆け抜けてくれ」と男に言われ、簡単そうだ、と思って運び屋をはじめた。リレー競争の次走者のようにいつもコマの前で待っていた男からの連絡は常に、「非通知だった」(A供述)らしい。
いっぽう、B被告は公判で、「31万円の家賃はすでに半年分振り込まれていた」と語った。また、その男の詳細については「世話になっているから」と黙秘を続けた。
両人とも借金を抱えていたが、こうやって金に困っている人に声をかけて、時には世話して抱え込んでくるのが、裏DVD店の“黒幕”の手である。
貧困日本、の現状では、特に注意が必要だろう。(了)