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『サントリードリームマッチ2019』MVPは高橋由伸!苦笑いで「久々に野球が楽しかった」

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高橋由伸

 7月29日、『サントリードリームマッチ』が東京ドームで行われた。1995年から“夢や感動を伝えたい”をコンセプトに行われているイベントで、今年で24回目を数える。出場選手は往年のスタープレーヤーばかりで、ネームバリューは抜群。梅雨明けのドームの外よりも熱い戦いが今年も繰り広げられた。

 今年も昨年に引き続き、山本浩二が体調不良のために、東尾修監督代行が率いる「ザ・プレミアム・モルツ球団」と田尾安志率いる「ドリーム・ヒーローズ」が対戦。昨年は12ー6のダブルスコアでモルツが圧勝し、5連勝を遂げている。

 6連勝を狙うモルツは摂津正、雪辱を果たしたいヒーローズは井川慶と、この中では若手の両投手での先発で幕を開けた夢の試合。序盤はジリジリとした展開で無得点が続くも、3回には、元ジャイアンツの尚成対由伸による高橋同士の対戦、4回には、桑田真澄対ランディ・バースの対戦などで会場を沸かせた。

6回には、野村弘樹対片岡篤や立浪和義の“PL対決”や、ピッチャー高橋由伸対バッター桑田真澄の“攻守入れ替え対決”などのここでしか見られないマッチアップも見られた。

 直後に代打小田幸平が告げられると、マウンドには中村紀洋が登場。小田が中村の独特なフォームを大袈裟に真似ている間に投球して笑いを誘い、更にはフォームを直接指導するなど、徐々にエンターテインメント色が強くなる。

 その裏、モルツは和田一浩のショートゴロの際に、サードランナー高橋雅裕がホームに突っ込み一度はアウトの判定も、ドリームマッチ初のコリジョンルール(走者の走路をふさいではならない)が適用され得点が認められた。このプレーから流れが変わり、モルツは一挙5点を挙げ、逆転に成功した。

 7回モルツの攻撃では、ギャオス内藤対池山隆寛のスワローズ対決となったが、頭部を通過するビーンボールに池山が激高。マウンドへ詰め寄り一足即発のムードに会場は騒然となるが、なんとキスで仲直り。続くバッター・古田敦也に対してもビーンボールを投げ込み、“またもや“の期待が高まるが、古田はマウンドへ向かわず頑なに拒否。見かねた一塁塁審・大和がマウンドで熱いキスをお見舞い。“ダチョウ倶楽部コント”が無事完結した。

 もちろん、リビングレジェンドも溌溂とした姿を披露。“浪速の春団治”に乗って登場した川藤幸三は口に「プレモル」を含むと、バットに吹きかけるパフォーマンスの後、尻餅をつくほどの渾身のフルスイングを披露。負けじと“球界のご意見番”張本勲もフルカウントからのボールをしっかり見極め、“あっぱれ“なフォアボールを選ぶなど、まだまだ若い者には醸し出せない雰囲気で、スタンドのオールドファン達に元気を届けた。

 試合は7-2でプレミアムモルツ球団が勝利。MVPには、現役時代を彷彿とさせる右中間へのツーベースや、ピッチャーまでこなした高橋由伸が初出場にして栄冠を手にした。ヒーローインタビューでは「久々に野球が楽しかった」と自虐気味の意味深発言。これにはナイン、観客共に苦笑いだった。

 ペナントレースとは一味違った、野球の楽しさを詰め込んだレジェンド達による“夢の球宴”。老若男女が楽しめるイベントは、野球に関心の薄い層にも響いたようで、お爺さんとお孫さんが「また野球見たいね」と話し合う笑顔がそれを物語っていた。楽しい時間を過ごした40,228人の満員で膨れ上がった東京ドーム。ほろ酔いで帰路につく観客は皆、笑顔が溢れていた。
(文中敬称略)

取材・文・写真/ 萩原孝弘

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