26日、巨人との金銭トレードが成立するのと同時に、楽天は支配下登録と出場登録も一気に済ませ、梨田昌孝監督(63)も「6番・遊撃」でいきなり起用した。
シーズン途中のトレードは緊急補強ではあるが、チームに合流した日に即起用とは、梨田監督も思い切ったことをするものである。しかし、当のクルーズはむしろ嬉しそうだった。
「茂木、藤田の両内野手を故障で欠き、ペゲーロも23日のオリックス戦で左太股を痛めてしまいました。今季の楽天はペゲーロ、ウィーラー、アマダーの3人の外国人野手を2番から並べる強力打線で勝ち続けました。ペゲーロは復帰まで2、3週間掛かるとのことで、星野(仙一=70)副会長が動き、巨人と一気に話をまとめてみせました」(球界関係者)
ペゲーロの症状が球団フロントに報告されたのは、24日。巨人関係者によれば、トレードの申し込みは「25日」とのことなので、交渉も駆け足だったようだ。
「今までの楽天だったら、ペゲーロが復帰するまでの約3週間、控え選手を起用してなんとか凌ごうという感じでした。今年は優勝が掛かっていますからね」(スポーツ紙記者)
昨季終盤、巨人・高橋監督は気分屋なクルーズの性格を嫌い、以後、出場機会を失っていた。今回のトレードはクルーズを生き返らせるチャンスともなったが、楽天のチームスタッフの一人が気になる発言もしていた。
「巨人は良い選手が一軍で使われていない」
大型補強の代償だろう。中堅、若手が悶々と二軍暮らしを強いられているというわけだ。
「クルーズのトレードはたしかに即決即断でしたが、星野副会長は“種蒔き”をちゃんとやっているんですよ。昨年12月、両球団の間で中堅クラスのトレードが成立していますが、その交渉中、世間話を装って『クルーズは使わないのか? 良い選手なのに』とか言ってたんです。巨人側に『ウチ(楽天)はクルーズに興味がある』と刷り込んでおいたんです」(前出・球界関係者)
当時の巨人のゼネラルマネージャーは、堤辰佳氏。星野副会長の明治大学の後輩にあたる鹿取義隆氏が巨人GMに就いたから、今回の駆け足トレードが成立したのではない。「楽天はクルーズに興味アリ」の情報が前任者から引き継がれていたので、一気に話がついたという。
「今回は最終的に金銭トレードで成立しましたが、巨人側はリリーフタイプの投手を交換要員で獲れるのかどうか、探りも入れたみたいです。途中、複数トレードの話も出たと聞いていますが…」(前出・同)
その通りだとすれば、星野副会長は“宝の持ち腐れ”状態の巨人に、次に狙うトレード選手名も刷り込んだことになる。
「各球団の二軍首脳陣は巨人と試合をするとき、見込みのある若手もチェックしています。まあ、巨人もやっていますが…」(プロ野球解説者)
今オフ、巨人は選手の大粛清を行うとされるが、補強を止めるわけではない。楽天で生き返ったクルーズを見て、「巨人二軍は宝の山」と判断した球団も少なくないようだ。
(スポーツライター・飯山満)