「お披露目は今年11月に開催される『アジア プロ野球チャンピオンシップ2017』になります。最大のライバルは韓国ですが、招集される選手の長所をきちんと生かせば勝てるというのが、NPB事務局や12球団経営陣の考えです」(ベテラン記者)
稲葉氏は07年の北京五輪出場予選以降、“侍ジャパンの常連”でもあった。現役を退いてからもコーチとしてチームを支えているので、国際試合の難しさは熟知しているはず。それだけに「勝って当然」の結果も求められるだろう。これまで侍ジャパンに招集されてきた各主力選手からの人望も厚いという。球団監督、コーチ経験の無さも懸念されるが、それは前任の小久保裕紀氏も同じ。稲葉ジャパンを好意的に見る声のほうが多く聞かれた。
NPBが稲葉ジャパンに課した最大、かつ最優先事項は、東京五輪での金メダル獲得。その点については苦労させられそうだ。
「国際オリンピック委員会(IOC)は、野球・ソフトボール競技に関する東京五輪組織委員会側の要望、実施計画案を却下しました。野球は一次リーグとして、参加6か国の総当たり戦を計画したものの、IOCは『前回総会でも、総当たり戦は採用しないと伝えたはずだ』と突き放したような回答を寄せています」(体協詰め記者)
IOCに従えば、一次リーグは「1組3チーム 最高勝率2チームによる決勝」になるという。その通りになれば、日本代表の雄姿は最大3試合しか見られないことになる。
野球・ソフトが東京五輪の追加競技に立候補し、空手、サーフィンなど他競技と当選を争ってきた。その経緯を指して、こんな声も聞かれた。
「追加種目の最終候補に残った5競技をパッケージにして、全て当確させたのは、『野球・ソフトは最大の観戦料収益と企業協賛金が見込める。野球は世界的に見て競技者人口が少ないので落選の可能性があった。是が非でも、最大収入源となる野球を通す』との願望が、東京五輪組織委員会内にありました。稲葉ジャパンの試合数が減れば、それだけ、観戦料が減ります」(関係者)
しかも、東京五輪は通常の国際試合とは異なる舵取りもしなければならない。
野球・ソフトはプロアマが一体となってピーアール活動を続けてきた。アマチュア球界側は「東京五輪にアマチュア出場枠を確保してほしい」と求めており、プロ側もそれを飲む方向だ。そうなると、「監督・稲葉」は初めて接するアマチュア選手も起用していかなければならない。
「侍ジャパンやプロ野球を支援してきた企業は、ビッグネームの代表監督就任を期待していました。稲葉氏には失礼だが…」(前出・体協詰め記者)
日本の野球レベルなら、勝って当然。お披露目となる『アジア プロ野球チャンピオンシップ2017』のスタンドを満員にできなければ、稲葉体制を不安視する声も出てきそうだ。
(スポーツライター・飯山満)