ようやく高倉純平(香取慎吾)と柳沢春菜(黒木メイサ)の恋が成就した。二人が手を握ることで互いの気持ちを確認するという爽やかな演出がなされた前回に対し、今回はドロドロした展開が目白押しである。矢代英彦(藤木直人)は妻・遠藤聖子(奥田恵梨華)の不貞を金で解消させようとするが、反対に衝撃の事実を知ってしまう。春菜の弟の優次(玉森裕太)は、両親が離婚調停中で居場所のない恋人のために、高校生同士で同棲しようとする。
そもそも幸せな結婚を目指す結婚相談所をテーマとしながら、不思議なことに登場する夫婦は全て破綻している。英彦と聖子、春菜の両親の匠悟(小林薫)と高原早苗(高畑淳子)、純平の元彼女の渡辺みゆき(国仲涼子)と渡辺辰則(高橋努)と結婚前、離婚後、結婚中の破綻カップルが勢揃いである。
そして純平と春菜の恋にも障害が立ち塞がる。それはサブタイトルにある通り、春菜の父親と純平の元彼女である。本来ならば父親も元彼女も障害にはならない。父親は娘の恋愛に口を出せる立場ではない。元彼女は純平を振って純平の友人と結婚した存在である。現実に純平は、みゆきから連絡を受けても心は春菜のことでいっぱいで、少しも動揺しなかった。動揺しない自分に驚いているほどであった。
障害にならないものが障害になってしまう理由は、純平の非常識な優しさである。純平は匠悟や春菜の弟・優次(玉森裕太)のために行動するが、全て裏目に出てしまう。また、失意のみゆきを引き留めてしまう。純平が非常識な優しさから余計なことをすることで、事態を悪化させてしまう。
これは前クールの月9ドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』の主人公・柏木修二(三浦春馬)と共通する。『大切なことはすべて君が教えてくれた』は、婚約者のいる高校教師が女子高生と一夜を共にするという冒頭からドロドロした設定であった。『幸せになろうよ』は明るいタッチで前クールの印象を一新したものの、2作続けて男性の主人公の度を越した優しさによるドロドロ展開となった。これが月9ドラマの新機軸になるか注目である。(林田力)