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元川悦子のサッカー魔法陣(20)

 昨季のナビスコ杯王者・大分トリニータが、予期せぬ低迷の真っ只中にいる。

 今季のJ1はすでに3分の1の11節を終了したが、1勝1分9敗の勝ち点4でダントツの最下位。4月4日の浦和戦から8連敗しており、浮上のきっかけを全く見いだせない。ウェズレイら主力6人が負傷離脱する異常事態に、名将といわれるシャムスカ監督もお手上げ状態だ。

 大不振にあえぐ要因は「昨季の初タイトル」に他ならない。年間予算22〜23億円の地方の小クラブの初優勝ということでインパクトは大きく、溝畑宏社長も選手たちもメディアに引っ張りだことなった。これでチームに油断が生まれたうえ、年俸大幅アップの必要性も生じた。溝畑社長も「タイトル料はすべて選手年俸に消え、新戦力を補強する余裕が全くなかった」と言う。しかし昨季末には守備のキーマン・深谷友基が半年離脱することが決まっており、堅守にほころびが出るのは予想できた。

 しかも昨季の躍進で、今年1月の日本代表候補合宿に金崎夢生と森重真人という攻守の要が召集された。だが岡田ジャパンには定着できず、疲労困憊でチームに戻ってきた。そんな彼らが体を鍛え直す余裕もないまま、2月のパンパシフィック選手権にナビスコ杯王者として参加。このアメリカ遠征で金崎と森重が一層コンディションを崩し、他の選手たちも十分なフィジカル強化ができなかった。「これが最大の誤算だった」とシャムスカ監督も嘆く。

 さまざまなツケが回り、4〜5月の過密日程で負傷者が続出。チームバランスが大きく崩れた。特に苦しいのが守備。昨季通算失点は24だったのに、今季は11試合で早くも19失点。これでは勝てるはずがない。

 それでもフロントは「シャムスカ監督を解任しても意味がない」と指揮官交代に踏み切る勇気はないようだ。昨季、日本中に夢を与えた小クラブが生き残るには勝利しかないのだが…。ここ数試合がヤマ場になりそうだ。

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