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レジャー 2009年03月16日 15時00分
阪神大賞典(GII、阪神芝3000メートル、22日) JC馬スクリーンヒーローが復帰
昨秋のジャパンCではディープスカイ、ウオッカを抑えて快勝、古馬の頂点に立ったスクリーンヒーローが、春の盾取りへいよいよ始動する。 有馬記念5着の後は山元トレセンへ放牧に出され、2月19日に帰厩。以降は25日の坂路800メートル52秒1を皮切りに週2本ずつ時計を出してきた。1週前の追い切りは11日、今回から乗りかわる横山典騎手が手綱を取って行われ、南Wコースで5F72秒1、上がり3F41秒6→12秒3を馬なりでマークした。 鞍上が「感触が良かったし、いいと思う」と言えば、「タイムは平凡だったが、ゴールを過ぎてからも行っているから負荷はかかっている。順調ですよ」と見守った鹿戸雄調教師。「有馬記念の後は1週間、自厩舎で疲れを十分取ってから移動したので、向こうでも休みなく乗れたからね。直前の1本で態勢は整うでしょう」と青写真通りの仕上がりに笑顔がこぼれた。 GIV2を狙った前走は0秒5差5着に終わったが、「負かしにいっての結果だから、仕方ない。あの時点ではダイワスカーレットにかなわなかったということ」と指揮官。「でも、3歳の秋から長く休んでいた馬だから、これからまだまだ力をつけて強くなってくると思う」と、さらなる伸びしろを強調した。 実際、5歳の春を迎えたヒーローは「落ち着きを増し、普段のしぐさも大人びてきた」という。「欲目もあるんだろうが、どっしりしてかっこよく見えるし、何か馬が自信を持っているような感じがする」 3000メートルは初体験になるが、過去、2400メートル以上は、重賞2勝を含め、<3201>。「長いところを上手に走れるのがセールスポイント。復帰した当初から春の天皇賞を目標にしてきた馬だし、距離は心配していない」と同師。父がロベルト系のグラスワンダー(有馬記念2勝)、母の兄がステイヤーズSを勝ち、天皇賞・春、菊花賞で2着したステージチャンプと、血統的な裏付けも十分ある。 「今度は目標にされる立場。受けて立てるようにやってきたつもり。あとは乗れている横山典騎手に任せたい」 今年に入ってAJCC、小倉大賞典、中山記念、オーシャンS、弥生賞、中山牝馬Sと重賞6勝の絶好調男が勝利に導く。
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レジャー 2009年03月16日 15時00分
中山牝馬S(GIII、中山芝1800メートル、15日)キストゥヘヴンが有終V
競馬は筋書きのないドラマとは手垢のついたフレーズだが、15日の「第27回中山牝馬S」(GIII、中山芝1800メートル)は、引退の花道をかけて臨んだ2006年の桜花賞馬キストゥヘヴン(牝6歳、美浦・戸田厩舎)が筋書き通りに優勝。見事に有終の美を飾った。勝ちタイムは1分49秒1(稍重)。 レースはピンクカメオの意表を突く逃げで幕をあけた。それまで末脚を身上としていたキストゥヘヴンもいつもより前めの好位4、5番手を追走。直線でインを突くと、しっかりとした脚取りでカメオを捕らえ、1馬身振り切ったところがゴールだった。 劇的な勝利をエスコートした横山典騎手は「最高の状態に仕上げてくれた厩舎スタッフと、馬のおかげ」と謙遜したが、その騎乗ぶりはまさに神がかり的。今開催(2回中山)の重賞はこれで4戦4勝と総なめにしている。 人馬とも最高のバイオリズムで臨めたことが相乗効果となって、記録と記憶に残る優勝へとつながった。思い起こせば、同馬が3歳春のときに、初重賞勝ち(フラワーC)を飾ったパートナーも横山典騎手だった。 コンビを組んだのは実に、07年のヴィクトリアマイル(4着)以来、約2年ぶりのこと。「馬はすごく良くなっていた。(直線で逃げ粘る)ピンクカメオの内を突いた時の爆発力は強烈だったよ」。横山典騎手は全身に鳥肌が立ったようだ。 大団円を迎えたキストゥヘヴンは、明日から第二の人生(繁殖入り)をスタートさせる。花婿候補はシンボリクリスエスか、新種牡馬チチカステナンゴが有力だ。
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レジャー 2009年03月16日 15時00分
フィリーズレビュー(JpnII、阪神芝1400メートル、15日) 伏兵ワンカラットが桜へ弾み
15日の阪神メーンで行われた「第43回フィリーズレビュー」(JpnII、芝1400メートル)は、6番人気のワンカラット(牝3歳、栗東・藤岡健厩舎)が優勝。桜花賞への最終切符を手にした。勝ち時計は1分22秒4(良)。 レースは大外枠から果敢にラヴェリータがハナを主張したが、前半600メートル通過は1400メートル戦にしては平均ペースといえる34秒3。前に位置した馬に有利といえる展開となった。ワンカラットは課題の折り合い難を露見することなく、2、3番手をスムーズに追走。直線インからスパッと突き抜け、2着以下に1馬身4分の1差をつける完勝を飾った。 「調教のときから精神面の成長は感じていた。馬も落ち着いていたし、いいスタートが切れて、いい位置で競馬ができた。何より、折り合いがついたのが勝因です」と藤岡佑騎手。「本番? あと1Fだけ我慢が利けばですけど、きょうみたいな競馬ができれば大丈夫だと思いますよ」と手応えを感じていた。 一方、藤岡健調教師も「本当にいい仕上がりで望めたし、ジョッキーもうまく乗ってくれた」と満足げ。昨年の阪神JFでは終始、行きたがり直線を迎えたときにはスタミナ切れ。悪夢の12着に終わった。 それからたったの3カ月。ワンカラットは自分自身との勝負に打ち勝ち、気性面で飛躍的な成長を遂げた。はるかかなたにいたブエナビスタの背中がしっかりと見えた一戦だった。
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社会 2009年03月16日 15時00分
テリー伊藤氏の漢字誤読ツッコミに麻生首相自爆答弁
麻生太郎首相(68)は15日、NHK「総理にきく」に生出演し、演出家のテリー伊藤氏(59)に漢字誤読を突っ込まれて“自爆答弁”をしてしまった。 直前に散髪して男前になった首相に対し、テリー氏は冒頭から容赦なく「しゃべりの脇が甘いんですよね」と、失言癖や漢字誤読など国民のだれもが抱く疑問をストレートにぶつけまくった。 テリー氏が「一国のトップなのだから、事前に振り仮名でも振っておけばよかったのに…」と突っ込むと、首相は「原稿をみてしゃべるということをあまりしないというのが大きい。もう少し原稿に目を落とすようにしないといかんかなあというのは、反省としてはある」と答えた。 この釈明は納得できない。これまで首相は「未曾有(みぞう)」を「みぞゆう」、「踏襲(とうしゅう)」を「ふしゅう」などと読み違えている。原稿を見なかったがために「みぞゆう」「ふしゅう」と述べたというのであれば、なおさら“おバカ”。そんな日本語はない。“ウソつき太郎”が露見した格好だ。
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ミステリー 2009年03月16日 15時00分
琵琶湖は人工湖だった!? 新たな土器や巨大魚は“彼ら”からのメッセージ?
世界3大古代湖のひとつに数えられる琵琶湖は人工湖。そんな大胆な仮説を立てるのが心霊研究家の立川菊花氏。天上を意識しているとしか思えない伝説が残され、遺跡から新たな土器が発掘され、巨大鯉の捕獲も報告されている。それらは、琵琶湖からのメッセージの可能性もあるのだ。 先週の続き、琵琶湖にまつわるミステリーを展開する立川氏の新説は説得力がある。(以下、コメントはすべて立川氏) 「日本海がまだ湖として存在していた時代、大陸の端にある巨大な湖は宇宙から見ても相当に目立つ地上物だったはず。多くの地球外生命体が飛来していたと思います。実は、琵琶湖はそんな地球外生命体によってつくられた人工湖の可能性がある。そう考えるほうが、サテライトとして存在した琵琶湖の存在意義として辻褄(つじつま)が合うのです」 琵琶湖に近い若狭湾には浦島太郎伝説や天橋立など、まったく異なる文明を意味する伝説が多く残されている。さらに、ナマズ伝説や鯉が天に登り竜へ変化する登竜門伝説などから推測できるのは、天上つまり地球外生命体を意識していたのではないかということだ。 異邦人、異文化との合流から生まれた伝説とは、明らかに趣(おもむき)が異なるのだ。 「琵琶湖の構造が不自然なほど海水をシャットアウトする構造になっているのも、多くの謎がある。私自身、今回の研究は、まだ着手したばかり。琵琶湖周辺に多く残されている謎の解明が、地球外生命体の正体に近づくキッカケになるのではと期待しています」 琵琶湖は宇宙人によって造られた…その根拠の一端でも証明できれば、センセーショナルな波紋が広がるのは間違いない。琵琶湖周辺には多くのミステリーが存在し、中にはその解明が歴史を塗り替える可能性があるものも少なくない。 最後に立川氏が非常に気になるコメントを残している。 「最近、琵琶湖周辺の遺跡から非常に珍しい人面を型どった土器が発掘され、琵琶湖では新記録となる巨大な鯉が捕獲されるなど珍事が続発しています。これは、琵琶湖から我々への、なんらかのメッセージと受け止めるた方がいいでしょう。日本海を中心とした地域で何かが起きる予告だと思います。大きな天変地異の可能性もあると思うのです…」
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トレンド 2009年03月16日 15時00分
高橋四丁目の居酒屋万歩計(3)「スタンディングコーナー1F」(バー、2Fは時々(じじ)バー」)
JR御徒町駅北口から徒歩210歩 2人で飲み屋に入ったとする。テーブル席とカウンター席とがあって、お好きな方へと言われたとする。十中八、九、仲良しだったらカウンター席を選ぶのではないだろうか。「カウンターでいいよね」という決まり文句で誘(いざな)いながら。 この場合、誘われた方も、よくない、いやだ、拒む、とはけっしていわないことになっている。カウンターで隣り合うと、膝はぶつかる、肘はぶつかる、どうかすれば手や指までぶつかる。しかし、それは互いに承知である、というところまで考察してはいたが、しかしそれ以上、問題を深化させることはできないでいた(寿司屋のカウンターように、ご主人の立つ、つけ台が最上席という場合は、「でいいよね」とは言いわない)。 さて、わたしもNHK「ラジオ深夜便」のお世話になっているひとりである。過日、目の覚めるような話を聞いた。 ナチスのアウシュビッツ収容所を描いた「夜と霧」の作者フランクル氏が、弟子の日本人医師長田勝太郎氏(その夜のゲストである)を訪ねて、はるばる日本までいらした折、先生夫妻のあまりの仲のよさに、長田氏は冷やかし半分に秘訣を伺いたいものだと話を振った。すると先生はまともな面持ちで、こう言われたというのだ。 「男女の仲は、最初はアバタもエクボです。それが、アバタはアバタ、エクボはエクボになります。次にエクボもアバタになります。だから顔を見合わせてはいけないのです。どうすればいいか? 簡単です。同じ方向を見ていればいいのです」 わたしはまんじりともせず朝を迎えた、というのは嘘だが起き上がってメモをとった。映画のコピーライターをしていた習性で、いまでも枕もとに紙と鉛筆はある。目覚めたら畳に惹句を書きなぐっていたこともあったが、判読できなかった。釣り逃がした魚というやつである。早起きはしようがないとして、昔をしつこく覚えているのはよくない、老化だな。 バー「スタンディングコーナー」の2Fは「時々(じじ)バー」と名づけられていて、由来を尋(たず)ねると、亡くなった先代の「爺(じじい)」がやっていたからと説明をうけた。まあそれはいいとして、街に不似合いなほどこじゃれた佇(たたず)まいのこの2階建てバーは、地方の小都市の、小銀行の、小支店の潰れた跡、といった風情がたまらない。 仲良しになりたい2人は2階にゆく傾向にあるけれど、ほんとの仲良しは1階でしょ。同じ方向を向きながらね。角のハイボール、270円。予算2000円東京都台東区上野6-2-11
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トレンド 2009年03月16日 15時00分
高橋四丁目の居酒屋万歩計(2)「BAR 楽」(カウンター日本酒バー、らく)
池袋駅西口から徒歩280歩。東武百貨店プラザ館内 珍味の三点盛りが品書きにあって、注文すると、うるかが白い。なぜ白いのかと蝶ネクタイのおにいさんに訊(たず)ねると、「お客さんがおっしゃる『黒いの』は苦(にが)うるかといって鮎の内臓を塩辛にしたもの。これは身うるかだから白いのです。子うるかというものも(東武デパートの食料品売り場には)あります」ということだった。京の祇園ではいまでも、うるかを食べていると汗で衣裳を汚さないと、珍重されている。 切子のグラスが60mlで3銘柄飲めば1合だ。流行のシステムの、ここは草分け。デパート開店の午前10時から21時(日曜は20時)まで営業。10席足らずのカウンターなので、椅子の争奪戦は激しい。狙い目どきをうかがうと、ランチ終了時の3時ころでしょうか、というお返事を賜った。デパートなので対応がなにかと丁寧。 わたしの理想とする居酒屋珍味の三点盛りは苦うるか、ばくらい、あけがらし。あけがらしをご存知でしょうか。羽前長井之庄(山形県長井市)の創業寛政元年の山一醤油に伝わる、一族の婚姻などめでたい時にしか仕込まない門外不出の食べ物。八代目大和屋弥助氏による命名の由来はこうだ。 「故七代目が学生時代、東京の寄宿舎にて同室であった谷川徹三氏(作家、哲学者にして谷川俊太郎氏の父)と共に部屋で田舎から送られた伝来の芥子糀(からしこうじ)で酒盛りをしておりました。その時、谷川氏が盃を片手に『落語にも明烏(あけがらす)てぇ噺(はなし)があるし、(中略)メデテー芥子ってことで【あけ(明と開をかけて)がらし(芥子)ってなあどうだ】』(栞より)というのに、七代目である自分の父がはたと膝を打った」のであると。 糀が生きているあけがらしは、瓶詰めから2カ月までを爽味期、3〜6カ月までを熟味期と名づけ、それぞれの風味をご賞味いただきたいと、瓶の上掛け紙に赤い字で念押しするほど自信満々。 本日、豆皿で突き出しとして供された富山の辛味噌が、あけがらしとかなり近似値の味わいだったので、研究熱心なこの店などには近々、登場するやに思う。選りすぐった自慢の日本酒と、それに負けることのないつまみを擁して好き者をお待ちする、侮るべからざる“デパ地下居酒屋”です。予算2000円東京都豊島区西池袋 東武百貨店池袋店プラザ館B1F ワイン売場横
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トレンド 2009年03月16日 15時00分
高橋四丁目の居酒屋万歩計(1)「Aサイン・バー」(沖縄バー、えーさいんばー)
小田急線・京王井の頭線、下北沢駅南口から徒歩350歩 沖縄の首里城には600年前の蒸留酒の記録があるという。400年前にはいまでいう泡盛の製造・貯蔵が始まり、先の沖縄戦で灰燼と化した甕(かめ)の中には、じつに300年前の古酒(クースー)もあったそうだ。沖縄では、いまやっと40年ものが出回り始めたところだが、樹木も古酒も、300歳では自力で逃げられない。 「中国皇帝の使節である柵封使(さくほうし=爵位を授ける皇帝の命令書を持参した使者)を迎える琉球王朝にとって、軍人、商人など四、五百人にもなる一行」(「焼酎」朝日新聞西部本社社会部編)を厚くもてなすために、宴会用の酒を製造・貯蔵する専門職まで任命していた。泡盛を名乗るための4条件は、(1)原料はタイ米を使用すること、(2)黒麹菌を使うこと、(3)全麹仕込みであること、(4)沖縄で製造することである。 命名には諸説あるが、甕から汲(く)んだ酒を容器に移す際に、容器に糸状に落とした泡盛が度数が強ければ細かく泡立ち、弱ければ泡は大きくてすぐ消える。そのようにしてアルコール度数を計った。度数を見ることを泡盛といった。やがて酒は泡盛と呼ばれた、というのが好きだ。 沖縄戦の壊滅的打撃からの復活を余儀なくされた蔵元のひとつが、宮里酒蔵所。三代目である宮里徹氏が満を持して発表した「春雨」は、当初同業者から泡盛ではないといわれた。納得できないで発奮した彼は東京へ販路を求め、東京の評価と実績で沖縄に再上陸した。東京の酔客たちが、よいことをしたことになる。大地に根ざす草木の希望という意味をもつ「春雨」。三代目の定義する「古くも香り高く、強くもまろやかに、辛くも甘い酒」を味わうには、舐めるようにしてでもいいから、ストレートに限る。 Aサインとは、米軍相手の商売の営業許可証(APPROVED FOR US FORCES)のこと。本土復帰前には大事の大事だった。天井を$札でディスプレイしているバーはビルの3階で、1階は昼食時から営業している、ちゃんぷるー、ソーキソバ、島らっきょう、ラフテーなど沖縄メニューを誇る食事どころ。下北沢で2号店を作る繁盛ぶりだ。予算1600円世田谷区代沢5-32-7 阿川ビル3F
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その他 2009年03月16日 15時00分
WEB読者プレゼント あずき茶
春からの新生活、男をあげた新しい自分をアピールしたいなら、オフィスで目立つこんな飲み物はいかが? 遠藤製餡(東京・東村山市)が発売する「あずき茶」はピンクのラベルが可愛くて、女子社員からの注目も集めそう。 あずきに含まれるポリフェノールやマグネシウム、カリウムなどの栄養分が一杯詰まっていて健康的だ。 同社では「最良のあずきは最高の土壌でしか育たない」という考えのもと、厳しく管理された土壌における生育、栽培の過程を経た原材料をのみを使用している。 実際に飲んでみると、見た目はかなり濃い色をしているが味は意外にもあっさり。ノンカロリーながらほのかに甘みが感じられる。ついついもう一本と手が出てしまいそうだ。この商品1ケース(ペットボトル500ml×24本)を5人にプレゼント。 ※プレゼントの応募は締め切りました。
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社会 2009年03月16日 15時00分
経済偉人伝 早川徳次(シャープ創業者)(11)
早川家が徳次を出野家に養子に出した時の条件に、普通以上の学業を修めさせることという項目があったが、結局、通い始めて1年で尋常小学校をやめさせられた。出野家には徳次を学校にやる余裕などなかった。 内職に明け暮れるだけの日々だった。遊びたい盛りの年頃なのに戸外で遊ぶことは全くできなくなった。 問屋と長屋の、マッチ箱を背にした往復だけが外に出られる時間だった。途中で同じ年頃の子供達が遊んでいるのを見かけると、羨(うらや)ましく思いながら、見ないふりで通り過ぎる。徳次はあり合わせの材料で手製の玩具を作って気を紛(まぎ)らわせることもあった。 学校をやめさせられてから半年近くが経った。この明治34(1901)年9月15日、徳次は熊八の家を離れる。 学校にも行かせてもらえず、栄養失調の体で内職仕事をさせられている徳次を不憫(ふびん)に思っていた井上せいが、本所の錺(かざり)職人の家で丁稚奉公できるように計らってくれたのだ。 錺というのは金属加工のことで、かつては簪(かんざし)や仏具・神具などの飾りを作っていた。 7年7カ月という長い期限の定められた年季奉公だった。徳次はこの丁稚奉公の話を聞いて心の底から嬉しかった。義母と内職から離れられる。新しい仕事をいろいろ想像してみた。 奉公を始める9月15日、東大工町の長屋から本所北二葉町二番地(現石原2、3丁目付近)の錺職人の家まで、かれこれ1時間ばかりの道のりを、盲目の井上せいに手を引かれて徳次は歩いた。後に、この時のことを述懐してこう記している。 “この時の井上さんに引かれた温かかった手のひらのぬくもりは、今なおこの私の手の中に残っている。私の生涯の門出は、盲目の井上さんによってひらかれたのであった”。(経済ジャーナリスト・清水石比古)