社会
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社会 2015年04月08日 13時00分
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第120回 実質賃金は4月にプラス化するか?
安倍晋三内閣総理大臣は、3月16日の参議院予算委員会において、 「4月になれば実質賃金がプラスになっていく可能性がある」 と強調し、野党側が、 「消費増税に伴う物価上昇で実質賃金が下がっている」 と、疑問を呈し、反発する光景があった。 筆者は、4月以降に実質賃金がプラス化する可能性はあると考える。ただし、別に「デフレ完全脱却」という話ではない。 デフレから完全に脱却するには、 「インフレ率(消費者物価指数など)がプラスで推移するが、それ以上のペースで名目(額面)の賃金が上昇し、実質賃金が増加する」 状況にならなければならない。 物価が継続的に上昇し、我々が働いて得る賃金が「物価以上のペースで増大する」構造にならなければ、真の意味で「デフレ脱却」にはならないのだ。 実質賃金は「名目の賃金から物価変動率を控除する」形で求められる。豊かになるとは、物価上昇以上に賃金が上がっていくこと、すなわち実質賃金の上昇を意味するのだ。 「そんなことが、起きるのか?」 などと思わないで欲しい。我が国は'97年の橋本政権の緊縮財政までは、実質賃金が長期的に上昇していた。橋本政権期にデフレに陥り、我が国は、 「物価は下落するが、それ以上のペースで賃金が落ちていく」 デフレ型の実質賃金の下落局面に入ったのである。 さて、民主党政権後期から直近までの実質賃金、CPI(消費者物価指数)、そして日銀のインフレ率の基準であるコアCPI(生鮮食品を除くCPI)の対前年比上昇率をグラフ化してみた(本誌参照)。 グラフ化すると、2013年に日本銀行が「2年でインフレ率2%」というインフレ目標を掲げて以来、我が国の物価と実質賃金に何が起きていたのか、一目でわかる。 2013年3月まで、我が国は「物価も賃金もあまり変動しない」、つまりは実質賃金が横ばいで推移する状況が続いた。 '13年4月に日銀がインフレ目標を設定し、大々的な量的緩和が開始された。我が国において、岩田規久男副総裁がかねてより主張していた「インフレ目標を設定し、中央銀行がコミットメントすることで期待インフレ率を高め、デフレから脱却する」というデフレ対策の“実験”が開始されたのだ。 結果、何事が生じたか。 日銀のコミットメントにより、円が売られ、為替レートが下落、円安になった。円安は輸入物価を上昇させ、消費者物価指数(CPI)も押し上げる。 そのため、'13年5月の時点から早くも実質賃金の下落が始まる。賃金が上がらない環境下において、物価が先行して上昇したためだ。 その後、'14年4月に消費税増税が強行され、物価が強制的に引き上げられ、実質賃金は大幅に下落。図の通り、“鰐の口”が大きく開いたわけである。 2014年6月以降、実質賃金の下落幅は縮小し始めるが、問題は同時にCPI、コアCPIの上昇率が縮小を始めたという点だ。すなわち、今度は鰐の口が閉じ始めたのである。 これが何を意味するか。要するに、最近の実質賃金の「下落幅の縮小」は、名目賃金の上昇ではなく、主にインフレ率の低下によりもたらされているという話である。 興味深いことに、直近('15年1月)の実質賃金の「マイナス幅」と、CPI、コアCPIの「プラス幅」は、共に2%前後となっている。すなわち、現在の実質賃金のマイナス分は、ちょうど消費税増税分であり、4月になれば物価も実質賃金も共に「ゼロ」になる可能性が濃厚なのだ。 というわけで、ポイントは4月の大企業を中心としたベースアップの影響が、全体の名目賃金を引き上げるほどに拡大するか、になるわけだ。 連合の調査によると、春闘の賃上げ率は全体で2.43%。とはいえ、中小組合は0.74%と、賃上げ率は下がる。 そして、問題なのは現在の日本において、労働組合に加入している人は、1000万人に満たないという点だ。 特に、日本の雇用の7割強を支える中小企業のほとんどに、労働組合はない。すなわち、連合の調査範囲に含まれない。 もちろん、筆者は別に、 「春闘で賃上げされても、波及効果は乏しく、全体の実質賃金は上がらない」 などと言いたいわけではない。むしろ、上がって欲しいと痛切に願っている。 とはいえ、重要なポイントは、昨年(2014年)の春闘においても賃上げ率は2.16%と、2%を上回っていたにもかかわらず、名目賃金(実質ではない)は対前年比0.2%増に過ぎなかったという事実である。 ゆえに、消費税増税分を全く吸収できず、実質賃金は大きく下落した。 要は、労組の組織率が落ちており、春闘と「全体の数値」の乖離が起きているのではないか、という問題があるわけだ。日本全国の企業、特に労組がない中小企業が安倍政権の期待通り、名目賃金を引き上げない場合、'15年4月の実質賃金上昇は、単に「物価下落」を反映したに過ぎないという話になってしまう。 辛うじて、実質賃金がプラス化する可能性はなくはないが、何しろ同時に「物価下落」が始まるわけだ。実質賃金の上昇は、極めて短期的なものに終わるだろう。 結局のところ、「需要牽引型」の物価上昇が発生しない限り、 「物価は上昇するが、名目賃金がそれ以上に拡大し、実質賃金が増大する」 という、正しい意味における「デフレ脱却」、つまりは1997年までの「国民が豊かになる日本」は取り戻せないのだ。三橋貴明(経済評論家・作家)1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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社会 2015年04月08日 11時00分
戦後70年特別読物 天皇・皇后両陛下パラオ共和国ご訪問 生還日本兵の証言(山口永元少佐、永井敬司元軍曹)「ペリリュー島 地獄の持久戦」(3)
およそ70日間にわたる組織的戦闘は、これで終結した。ところが味方の玉砕を知らず、なおも徹底抗戦を続ける部隊があった。 山口氏や永井氏らの残存兵である。 「味方が玉砕した当時、われわれは80人ほど生き残っていました。そこには海軍の兵士も交じっていましたが、昼間は洞窟にこもり、夜は夜襲を掛けるという、まさにゲリラ戦の繰り返しでした」(永井氏) 武器弾薬の不足は「水戸っぽ(茨城弁で水戸の人)の負けじ魂で補った」という山口氏ら残存兵は、その後小隊単位で分散行動を取り、少尉だった山口氏が小隊の指揮を執った。しかし、夜襲や米軍の掃討作戦で戦死が相次ぎ、翌'45年春ごろには34名の山口隊だけが残った。そしてこのころから残存兵は、戦闘モードからいかに生き延びるかのサバイバルモードに転換する。 「戦闘も散発的となり、島の守備から物資調達が目的になった。食糧、燃料、衣料、紙と鉛筆、タバコ…。ほとんど米軍からかっぱらったものでわれわれは生き延びたんです」 永井氏は、米軍の豊富な食糧をうらめしく見ていた。わずかな乾パンと金平糖で飢えをしのぐ日本兵に対し、米軍は食糧を積んだ戦車が戦場を行き来しながら兵士に直接配り、しかもコーヒーやジュースと一緒に食べている場面をいく度も目にしていたからだ。 山口氏らはいよいよ敵方の駐屯地に目を付けた。そこにはさまざまな物資が山積みされているのだ。 「缶詰、タバコ、マッチ、パン…。段ボール箱ごと、ごっそり頂戴するのです」 衣服も靴もボロボロだった。何しろ3年以上も着たまま。いかに常夏の島とはいえ裸に裸足ではいられない。物干し場からも衣服を奪い、身にまとった。そのため、残存兵は頭からつま先までそっくり米軍仕立てに変わった。 髪も伸びればヒゲも伸びる。それは、割ったビンの薄い部分を刃にして切った。幸い兵士の中に本職の散髪屋がいた。さらに元旋盤工の海軍兵士もいたからスプリングで日本刀、あるいは米軍の小銃を改造するなどお手のものだった。 残存兵にすればゴミ捨て場も宝の山。そこには新聞や雑誌などもあった。道を歩けば投げ捨てたタバコがいたるところにある。時には口紅の付いたタバコを発見することがあった。間接キッスなどと言ってうまそうにふかすから洞窟内はたちまち大騒ぎ。何しろ彼らは20代。異性への関心が旺盛な年代だ。 「映画も見ていましたよ。週末になると彼らは野外映画を楽しむので、私らも物陰から見ていました。もちろん洋画ですけどね」 山口氏らは味方の玉砕も、まして日本の無条件降伏も知らずに、洞窟内で潜伏生活を続けた。しかし、ゴミ捨て場で拾った新聞から日本の敗戦を感じてはいた。英語に精通した大学出身の兵士もいたからだ。 敗戦を伝える米軍の説得工作も始まっていた。残存兵の行動が大胆になるにつれ、島民との遭遇が当然増す。そのため、島民から日本兵の潜伏が米軍に伝わり、説得が始まったのだ。 山口氏らは、それでも半信半疑だった。グアムの戦犯収容所で捕虜となっていた澄川道男元海軍少将(第4艦隊参謀長)が派遣され、説得に当たる。けれど、やはり応答はない。そこで窮余の策として、肉親の手紙、敗戦を認めた日本政府の公式文書などを彼らに見せる。 こうしてようやく1947年4月23日、山口、永井両氏他34名の日本軍残存兵は米軍に帰順した。 「われわれは決して捕虜じゃない。捕虜とは戦闘中に捕らわれたものをいう。私らは捕まったのではなく、説得に応じて帰順したからです」 永井氏は現在もこのように、2年半のペリリュー島潜伏から生還した元陸軍軍曹としての矜持を示すのであった。
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社会 2015年04月07日 13時00分
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 株価はどこまで上がるのか
日経平均株価がいつの間にか2万円に近づいている。本誌が発売されるころには2万円を超えているかもしれない。政府経済見通しでは、'14年度の経済成長率はマイナス0.5%だ。マイナス成長なのに株価が上がるという不思議な現象は、なぜ起きているのだろうか。 一つの理由は、株価は景気を先取りするということだ。'14年度の景気が思わしくなかったのは、消費税率の引き上げと日銀の金融緩和で物価が大きく上昇したにもかかわらず、賃金がそれに見合うだけ上がらなかったからだ。実際、昨年4月から12月の消費者物価は、前年比3.7%も上昇した(帰属家賃を除く)したが、賃金は1.0%しか上がらなかったので、実質賃金が2.7%のマイナスになってしまった。これでは、景気がよくなるはずがない。 ところが、昨年秋から日本経済に神風が吹いた。原油価格の大幅な下落にともなって、物価上昇率が落ち着いてきたのだ。 実際、1月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は、前年同月比2.2%の上昇にとどまった。上昇幅は6カ月連続の縮小だ。消費増税の影響を除くと、いま、消費者物価は前年比でわずか0.2%しか上がっていないのだ。しかも4月以降は消費税増税の影響が一巡するため、消費者物価の対前年上昇率は、限りなくゼロに近づくだろう。 一方で春闘の状況をみると、賃金上昇率が昨年を上回るのは確実だ。つまり'14年度と打って変わって、'15年度は実質所得増になる。その結果、消費が拡大し景気を牽引しそうなのだ。株価は、それを先取りしているのだろう。 もう一つ、日経平均株価が上昇している理由は、格差拡大が進む中で日経平均に採用されている企業が、いわゆる勝ち組ばかりだということだ。こうした企業の利益の拡大は経済全体の拡大のペースを上回るため、株価が上がっているのだ。 それでは、日経平均はどこまで上がるのか。株価純資産倍率(PBR)という株式指標がある。一株当たり純資産の何倍の株価がついているのかという指標だ。東証一部でみると、今年2月のPBRは1.5倍となっている。先進国のPBRは平時で2倍弱だから、日経平均は、まだ割安ということになる。ちなみに、PBRが2倍になるのは日経平均が2万5000円のときだから、だいたいそれくらいが上昇の限度ということになる。つまり、それを超えたらバブルだと認識すればよいだろう。 そのときに、どう対処すればよいのか。実は30年前のバブル経済のときにも、バブルに乗じて大儲けした人はたくさんいた。損をしたのはバブル崩壊の際に逃げ遅れた人たちだ。だから、これからの株式投資は、瞬時に逃げられる体勢を整えておくことが重要になる。例えば、ある時点の株価を基準に決めて、そこから2割とか3割下がったら迷うことなく売るという姿勢で投資に臨むことだ。「きっと値を戻すに違いない」と未練を持ち続けることが、大ヤケドにつながるのだ。 これは、妄想で言っているのではない。実は30年前、私は日経平均に連動する投資信託に大金を投じていた。それをいつまでも持ち続けているうちに、結局、損切りの決断ができたときには3分の1以下に値下がりしていたのだ。
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社会 2015年04月07日 11時00分
戦後70年特別読物 天皇・皇后両陛下パラオ共和国ご訪問 生還日本兵の証言(山口永元少佐、永井敬司元軍曹)「ペリリュー島 地獄の持久戦」(2)
3日間にわたる容赦ない空爆と艦砲射撃で樹木は根こそぎ吹っ飛び、地面は掘り返され、岩礁は崩壊し、ほとんど丸裸と化した。 1944年9月15日早朝6時、ついに米軍はペリリュー島上陸を開始する。 「私は当時“モミジ”を守備していました。夜明けと同時に海を見たら海面が真っ黒なほど無数の敵艦が接近し、さらに水陸両用戦車などがこっちに向かって押し寄せて来るのが見えました。来るべき時がついに来たか、そう思いました」 山口氏の言うモミジは、島の西北に位置している。日本軍は守備陣地にアヤメ、レンゲ、イワマツ、クロマツなどの名を付け、特にイワマツ、クロマツ地区の守備を強化していた。実際、米軍はここから上陸する。 兵員を乗せた船艇が上陸ポイントを目指し、やって来る。この時であった。日本軍が仕掛けた機雷に触れ、船艇数隻が水柱を上げて撃沈。早くも米軍は犠牲者を出した。さらに上陸部隊は驚くべき事態に遭遇する。連日の猛攻ですっかり壊滅したと思っていた日本軍の猛反撃を受けたからだ。 イワマツに布陣していた富田保二少佐は、敵が間近に接近するまで反撃を止めた。イワマツはまさに敵の上陸ポイント。真っ正面で対峙する。米軍の上陸と同時に、満を持して待っていた守備隊は一斉に機関銃を猛射。砲兵部隊も野砲あるいは速射砲の砲火を浴びせまくった。 日本軍の不意打ちに合いながらも米軍の後続部隊は続々と上陸する。そのため米軍は前進も退却もできずに大混乱。米兵の「伏せろ!」「隠れろ!」「前進しろ!」といった絶叫が海岸にこだました。 日米両軍の壮絶な白兵戦−−。米軍は死体を踏み越えながら、雪崩を打って攻めてくる。 「だから私も軍刀を投げ捨て、味方の小銃を拾って撃ちまくりました。まさに接近戦。お互い顔がみえる距離でのブッぱなし合い。殺すか殺されるか。情けも容赦もありません」(永井氏) 上陸時点で米軍は1400人もの戦死者を出す。海岸はおびただしい流血でオレンジ色に変色した。そのため、人々は後にそこをオレンジビーチと呼んだ。 米軍の第一波攻撃は完全に失敗。しかし、物量に勝る米軍は各地の守備陣地を次々に撃破する。これを阻止するため富田少佐は決死切込隊で血路を開くが、敵弾を全身に浴びて壮絶な最期を遂げる。そこで永井氏らは夜襲に転じた。 「けれど、これがなかなかうまくいかない。彼らは夜になるとテントで休むが、集音マイクを仕掛けているため、わずかな音でも感知してすぐさま撃ち返してくるんです」 守備隊の崩壊で山口氏らは連隊本部を目指して退却。永井氏は途中右足に被弾してしまい、死んだ米兵のポケットから奪った化膿止めらしき薬で治すのだった。 米軍に退路を阻まれ、しかも連絡手段も失った山口氏らは戦況がわからず次第に孤立してゆく。一方、中川守備隊長は敵を島内に誘い、持久戦に持ち込んだ。 米軍は長期戦に伴って犠牲者が続出。戦闘は3、4日どころではなく、上陸から1カ月後、リュパータス少将は師団長解任の上、本国送還となり、連合軍の勝利も知らずに死去したと伝えられている。 中川守備隊長もいよいよ万策尽きた。兵力、武器弾薬、食料は底を突き、ついに決戦の時を覚悟する。師団本部に向け、通信兵に命じて決別の電報「サクラサクラサクラ」を打電させ、さらに連隊旗を奉焼し、1944年11月24日午後4時、従容として自決する。
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社会 2015年04月06日 14時00分
市場が囃す任天堂 DeNA提携に4つの不吉
この熱気は果たして本物なのか−−。資本・業務提携の発表を機に、にわかにフィーバーした任天堂とDeNAの株価に、市場関係者が冷ややかな視線を送っている。 電撃の提携発表を受け、翌3月18日は両社の株に買いが殺到、値幅制限の上限(ストップ高)まで急伸した。DeNAに至っては翌日もストップ高、任天堂はストップ高にこそ届かなかったが、昨年来高値を更新した。その後、両社とも株価は堅調に推移している。 「ともに事業展開が停滞し、業績がさえない両社がタッグを組んで局面を打開する。任天堂の岩田聡社長が『極めて強力な組み合わせ』と自賛したことから“提携の果実”に期待した個人投資家が殺到したのですが、思惑通り運ぶとは限らない。もし期待外れで終わったら目も当てられません」(大手証券マン) まず注目すべきは出資比率だ。両社は220億円ずつ出資し、相手企業の株式を取得する。その結果、任天堂はDeNA株の約10%を取得して第2位の大株主に浮上。これに対しDeNAは任天堂の1.24%の株主にとどまる。そもそも株価が3月24日終値ベースで任天堂(1万7940円)、DeNA(2139円)と大きな開きがあるためだ。保有比率から見て対等の提携とは言い難く、DeNAに対する任天堂の発言力は嫌でも大きくなる。これが今後に影響する不吉なシグナルの第1点。 それ以上に悩ましいのが戦略の違いだ。任天堂はこれまでスマートフォン向けゲームをかたくなに拒んできた。それがDeNAとの提携を機に“禁”を破る。といって主力の家庭用ゲーム機を放棄するわけではない。それどころか、記者会見の席で岩田社長は「家庭用ゲーム機への情熱を持ち続ける証明」として新型ゲーム機を来年発表すると強調した。要するにスマホとゲーム機との“二刀流”宣言だ。 一方、モバイルが主力のDeNAはスマホ向けでのヒット作が少なく、利用者からの課金収入をバンバン増やしたいのが本音。その点、マリオに代表される任天堂のキャラクター活用は魅力だが、当の任天堂が二刀流を貫く限り、スマホ戦略をめぐって両社の関係にヒビが生じかねない。これが第2の不吉である。 その試金石となるのが、今年度中に両社が共同開発して配信するスマホゲーム。しかし、任天堂ウオッチャーは素っ気ない。 「頑固一徹というのか、任天堂は自社ソフトにこだわってきた。それがDeNAとうまく協業できるのかは疑問が残る。まして出資比率からいって任天堂にはDeNAを見下したようなところがある。もし彼らが猛反発したら、この提携シナリオは崩壊する。それに二刀流といえば聞こえはいいが、現実に岩田社長が軸足を置くのは家庭用ゲーム機のハードとソフトの売り上げで、スマホはそのための呼び水みたいなもの。もしスマホの共同開発を通じて任天堂の本音が露呈されたら、この提携は一気に解消へ向かいます」 これが第3の不吉である。両社の資本・業務提携に飛びついた個人投資家が、そこまで読んでいたかは怪しい限りだ。ところが、不吉なシグナルには“ダメ押し”がある。 「記者会見で岩田社長は『2010年にDeNAからモバゲーに任天堂のキャラクターを出してほしい、と打診されたことが提携のきっかけだった』と強調している。当時、その手の話はあったのでしょうが、今年2月の会見でも本人は例によってスマホ向けゲームには慎重な姿勢を崩さなかった。それが一気に手のひらを返したのです。この間、よほどのことがあったとしか思えません」(経済記者) 任天堂は昨年3月期まで3期連続の営業赤字に塗れている。この3月期は辛うじて黒字を確保できる見通しだが、不良在庫一掃による苦肉の決算対策のたまものにすぎない。前出の任天堂ウオッチャーが苦笑する。 「彼は『結果に責任を取る』などと豪語しながら社長ポストに固執し、おかげで『恥知らず』『頑として辞めない社長』などと陰口されてきた。当然、有力幹部や株主など心ある面々は『さっさと辞めてくれ』と本気で思っている。経営手腕に疑問符を抱いている以上、いつ社長解任のクーデターが勃発しても不思議ではなかったのです。ところがDeNAと提携すれば『しばらくは様子を見るしかない』となる。これぞ岩田社長が仕掛けた“クーデター逃れ”という究極の延命策に他なりません」 そんな任天堂の救い難い“お家の事情”を知れば、ダシにされたDeNA社員はたちまち興ざめする。これが第4の不吉なシナリオだ。むろん資本・業務提携にかじを切った手前、直ちに白紙撤回とはいかないが、両社の間に早々と深い溝が生じたのは疑う余地がなさそうだ。
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社会 2015年04月06日 11時00分
戦後70年特別読物 天皇・皇后両陛下パラオ共和国ご訪問 生還日本兵の証言(山口永元少佐、永井敬司元軍曹)「ペリリュー島 地獄の持久戦」(1)
4月8日、天皇・皇后両陛下は戦後70年の慰霊のため、パラオ共和国をご訪問される。この地で亡くなった多くの日本軍将兵は、ようやく心安らかな日を迎えることができそうだ。 この思いは、奇跡的に生還した山口永元少尉(94)、永井敬司元軍曹(94)両名にしても同じ。山口氏らは米軍上陸から70日間にわたる激戦、飢餓、砲弾の中を頑強に同島を守り抜いただけでなく、味方の玉砕も日本の無条件降伏も知らないまま戦後2年半も洞窟に潜伏し、ゲリラ戦を展開した生き証人でもあるからだ。 1944年11月24日を最後に、中川州男大佐率いる茨城県水戸市で編成された陸軍歩兵第2連隊を主力とするペリリュー島守備隊は玉砕し、組織的戦闘は事実上終結。この攻防戦で日本軍は陸海合わせて約1万人、米軍は約1700人が戦死した他、約9000人の負傷者を出した。 これに動揺した米軍は第1海兵師団長を解任しただけでなく、事実さえ伏せた。米国民に納得のいく説明ができないため、不都合な事実の隠蔽を謀ったのだ。 実際、太平洋における海軍作戦を指揮したチェスター・ニミッツ海軍司令長官は、後に著した『ニミッツの太平洋海戦史』の中で、「ペリリュー島で払った犠牲と獲得した代価とを比較し、相殺したかどうかは疑問の余地がある」と回想している。 このように米軍にとっても“会心の勝利”とはとても言えず、苦汁に満ちた上陸作戦だったのだ。 ペリリュー島は日本から南に約3000キロ。大小百個ほどの島が連なるパラオ諸島の一つで、第一次世界大戦で戦勝国となった日本がドイツから統治権を委譲したもの。常夏の島であり、燐鉱石の採掘以外さしたる産業はない。にもかかわらずニミッツ長官は4万2000の兵力を投入し、70日間もの死闘を展開したのは、大型機の離着陸が可能な飛行場を奪取し、これを足場にフィリピン攻略と日本軍の海上輸送ルートを遮断するという二つの戦略を描いていたからだ。そのため、大本営は米軍を阻止すべく、第14師団の南方転出を下命する。 第14師団は水戸歩兵第2、高崎歩兵第15、宇都宮歩兵第59各連隊を隷下に置き、関東軍直轄部隊としてソ満国境警備に就いていた。しかし、絶対国防圏決定で第一陣として1944年4月、パラオに転進する。 ペリリュー島の守備隊長に就いた中川大佐の初仕事は陣地構築であった。連隊上陸前の同島は2500人ほどの海軍が守備していたが、ほとんど無防備状態。そのため山口氏は唖然としたという。 「兵力も少なければ陣地壕もなく、全く裸同然だった。これではやられて当たり前、そう思いましたよ」 米軍機による3月末のペリリュー島空襲で飛行場は破壊され、無残な姿をさらしていた。そのため中川守備隊長はサンゴ礁の洞窟、燐鉱石の採掘跡、中央山地を要塞化し、複郭陣地を構築すれば長期戦に有利、と判断する。 複郭陣地とは、壕と壕を卍型あるいは直角の通路で結ぶというもの。こうすれば壕内に火炎放射器や手りゅう弾を投げ込まれても直撃が避けられる。この複郭戦術は、従来の水際戦術の失敗から学んだ。進攻してくる敵艦をまず航空機で洋上撃滅し、続いて上陸部隊を海岸で迎撃するというものだったが、この作戦だと各地の守備隊は短期間で玉砕してしまう。そこで中川守備隊長は複郭戦術を採用した。これはその後の硫黄島、沖縄戦でも用いられた。 中川守備隊長はこの他、神出鬼没のゲリラ戦や夜襲攻撃を仕掛ける。万歳突撃を封じ、最後の一兵まで戦い自決を認めないなど、いくつかの戦術的特徴があった。 実際これが功を奏し、「戦いは厳しいが短い。3日、長くて4日で終わる」と大口をたたいたウィリアム・リュパータス第1海兵師団長にひとアワもふたアワも吹かせるのだった。
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社会 2015年04月05日 16時00分
大阪・近所からの借金も踏み倒ししていた73歳名物老女がこん睡強盗逮捕
大阪で73歳の老女が66歳の男性を“逆ナン”した上、昏睡強盗に及ぶという、何とも油断ならない事件が起きた。 大阪府警天王寺署が、3月25日までに昏睡強盗容疑で逮捕したのは、大阪市東成区に住む無職の女容疑者(73)。 「今回の逮捕容疑は、今年の1月14日午後11時半〜15日午前5時ごろまでの間に、JR天王寺駅付近で被害者男性に声を掛けカラオケ店に誘い、睡眠導入剤入りの缶ビールを飲ませ、現金3万円と携帯電話を盗んだ疑い。容疑者は否認していますが、昨年9〜11月にも天王寺で同様の被害が相次いでいるため、同署では関連を調べています」(全国紙社会部記者) 容疑者が“逆ナン”スポットにしていたとされる現場は、日本一の高層商業ビル『あべのハルカス』を仰ぎ見る商店街の一角だが、ハルカスで賑わう表通りとは対照的にアーケードに商店が数軒並ぶ、昼でも薄暗い裏通りに位置する。 「この辺はなにせ暗がりやから、うまいこと化粧してたら年齢なんかわかりにくい。派手な感じの年寄りやというから、酔っ払いなんかの目にはかなり若く見えてたんやないか(笑)」(飲食店店主) 容疑者も、その容姿と素行から近所では有名人だったという。 近隣住民が言う。 「家賃4万円のマンションで男性と同居していたのですが、家賃の滞納が続き近所の商店主などにたびたび1万〜2万円ほどを借り回り、その借金も返済が滞っていた。常にミニスカートを穿いて妙に派手な帽子を被っていたから、目立つ存在でしたよ」 また、別の近隣住民の間からは、「彼女は65歳あたりからミナミで立ちんぼとして稼いでいた」という話も聞こえてくる。 「天王寺から新世界にかけては、夜になれば飛田や茶臼山のラブホテルを根城にした立ちんぼがよううろつきよる。ただし、彼女たちも最近は高齢化が進んで商売が成り立たない場合も増えている。彼女もそのクチで昏睡強盗に切り替えたんかもしれへんな」(地元風俗店主) 高齢者の犯罪もさまざま。
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社会 2015年04月05日 15時00分
安倍政権の“中国大使候補潰し”疑惑
一部週刊誌が、在中国日本大使館前筆頭公使・和田充広氏(54)の女装写真をスクープ掲載。同氏が就任後7カ月で更迭された理由が、同写真と中国側のハニートラップに掛かった可能性があることを報じたが、この騒動が新たな展開を見せている。実は、和田氏の異例の更迭劇には、安倍政権が深く関与していたとの疑惑が急浮上しているのだ。 「女装写真は例年行われる懇親会時の出し物で、これ自体に大した意味はないのです。そのため、写真をリークしたのは官邸の息がかかった外務省筋ともっぱら。安倍政権には、次期大使の呼び声も高かった和田氏を更迭しなければならない事情があった、と伝えられているのです」(中国事情通) この人物によれば、その最大理由が米国の方針なのだという。 「実は、現在の木寺昌人大使はフランスや中東歴が長く、中国の動向に今一つ疎い。そこで政府は中国人民大学への留学経験を持つ生粋のチャイナスクール閥で、将来の在中国日本大使と謳われる和田氏を、昨年8月に筆頭公使に登板させたのです。ところが、尖閣問題で揺れる日米中の緩衝役を期待された和田氏は、就任後、米国の対中戦略と拮抗する親中的な姿勢を取り始めた。これが安倍首相の怒りを買い、更迭されたと見られているのです」(同) ちなみに、和田氏は過去にもODA担当部局から中国課長に就任という、お決まりの出世コースを棒に振った経歴を持っているほど。その際にも、「米国の強い不信感が人事を左右した」と評判だったのだ。 「つまり、今回の更迭劇にも米国の意向が反映された可能性が高い。中国側が、『安倍政権は親中派の和田氏を切り捨てた!』と怒り心頭なのは、この裏側を知っているからとも言われているのです」(政治部記者) 和田氏は更迭後、今年5月に福島県で開かれる「太平洋島サミット」の事務局長に就任したが、官僚の世界も一寸先は闇か。
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社会 2015年04月05日 14時00分
電力小売り自由化への東電の奇策
来年4月の家庭向け電力小売り完全自由化を前に、電力各社の生存競争が熾烈になってきた。主戦場は東京電力の“縄張り”最大の消費地である首都圏。関西電力は丸紅と共同で秋田市に大型原発1基分に相当する石炭火力発電所を建設、全て首都圏で販売する。他にも中部電力や中国電力、九州電力などが石油会社、ガス会社などと連合軍を結成し、首都圏での発電所建設を計画している。 これに危機感を募らせた東電が打ち出した“奇策”が、携帯電話会社との提携だ。電気代と通信代のセット割が最大のセールスポイントで、既にNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3社から事業提案を募っており、4月中にも1社と提携するという。これが実現すれば「携帯電話の契約を他社から乗り換えた客は電気代が安くなる」だけでなく、コンビニでも使える“共通ポイント”を導入することで顧客基盤の拡大が見込める。 「東電の狙いは単なる“首都圏防衛”ではない。携帯電話会社は全国ネットだから全国の家庭への電力供給が可能。インパクトは絶大です」(経済記者) いち早く電力自由化に踏み切った英国では、電気と携帯、固定電話、ガス、さらには保険などを組み合わせた多くの料金プランがある。これを駆使すれば、電力会社を主軸にした家庭密着型の巨大なネットワークが形成される。東電への対抗心をあらわにする関電や中電などのライバルが追随するのは必至だろう。 競争の原理が働くことで電気代が安くなるのは結構な話。一方、憂鬱なのは、あのわかりにくい携帯電話の料金プランが一層煩雑になりそうなことだ。 考えてみれば、今なお不当に高い電気料金を支払っているユーザーこそ“いい面の皮”ともいえる。
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社会 2015年04月04日 15時00分
中国主導「アジアインフラ投資銀行」設立で習近平が目論む安倍政権転覆
今年の年末にも中国主導で開設される『アジアインフラ投資銀行』(以下、AIIB)に、露骨な“日本潰し”の声が渦巻いている。 同行は開発途上国の発展を目的とした開発銀行で、すでに台湾やフィリピン、ベトナムなど41カ国が参加を表明しているが、いまだ日本は音無しの構え。それというのも、同行を開設する中国の真の目的が「日米から金融経済の主導権をもぎ取ることにある」と見られているからだ。 経済部記者が言う。 「日本は'66年に同じ目的の『アジア開発銀行』の設立を米国と主導した経緯がある。そのため、中国は当初からAIIBに日本が参加する可能性は100%ないと踏んで締め出しを画策したのです。実際、同行はアジア圏の国々に加え、英国やドイツなど、並み居る欧州列強国の参加を取り付けている。今後アジアの開発はAIIBを中心に進むはずで、これに参加できない日本は国際的なインフラ事業から疎外される可能性が極めて高いのです」 なぜ、こうしたことが予測されるのか。実は日本と米国が主導権を握る『世界銀行』や『アジア開発銀行』は、返済スキームのハードルを高く設定。さらに、環境に悪影響を及ぼす事業にもノーを突きつけてきた。 ところが、AIIBはそのハードルを下げて貸し出す方針。年間100兆円前後の融資がなされると評判で、これに諸外国が群がるからだ。 「要は、アジアの開発はAIIB主導で動き出すこととなり、途上国のインフラ整備も同行に参加していないと入札できなくなる。これに脅威を抱いた韓国は、米国の制止を振り切って参加表明したほどなのです」(シンクタンク関係者) もっとも、“日本潰し”を画策する中国の狙いは、これだけではないという。 「習近平政権はこのインフラ事業への莫大な融資を足掛かりに、領土問題で対立するアジア諸国を従属させようと目論んでいる。その上でアジアや欧州に中国経済圏を確立し、同国製品を大量に売りつけようとしているのです」(同) その腹黒さは超一流だ。
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