今季の成績は11勝5敗(26試合)、防御率2.04。『クオリティースタート』(6回を3失点以内に抑える/以下=QS)は21回(先発は25試合)。数値的には「投手として絶頂期にある」と言っていい。しかし、今季の館山は故障を抱えており、“強行登板”の連続だった。去る11月11日、右手血行障害とそれに関連する右手の手術を受けた。球団発表によれば、全治4、5カ月だと言う。ある程度、前倒しされるだろうが、来季開幕戦に間に合うかどうか微妙なところだ。
また、館山は開幕直前、グラウンド外のアクシデントで右肩を脱臼していた。初登板の4月15日は「手探り状態だった」(チーム関係者)とのことで、ここに血行障害も重なった。「優勝のため、チームのために投手生命を懸けて投げ抜いた」と言っていい。
2011年の推定年俸は1億2000万円。08年オフ、「1億円プラス出来高」で3年契約を結んだため、最多勝のタイトルを獲った09年も「1000万円の出来高」を得ただけだったという。今季でその3年契約が終了した。関係者によれば、「館山は再度、複数年契約を交わしたい」とのことだが、基本ベースの金額については“不透明”だ。チーム貢献度、ここ数年の安定した成績を考えれば、2億円でも安いくらいである。しかし、ヤクルトも経営資金が潤沢な球団ではない。また、気になるのは怪我の回復具合である。
球団は「キャッチボールを始められる時期」については明言していない。「全治4、5カ月」の発表から察するに、「キャンプ序盤」、本格的なピッチング練習ができるようになるのは「キャンプ後半」と思われる。小川監督以下首脳陣は「無理をさせたくない」と配慮するだろう。よって、「来季序盤戦は館山ナシで戦う」ことも覚悟しなければならない。
つまり、館山は大幅アップを提示しなければならない功労者ではあるが、来季の戦力として計算が立ちにくい。契約更改の基本は『その年の功績』と『翌年への期待』だ。復帰メドが明確にならない今回の契約更改は、球団と館山の駆け引きが展開される。球団は来季の復帰が遅れること、手術による投球への影響も踏まえ、「複数年契約は交わしたくない」と考えるだろう。館山に限らず、選手は「将来への保障」ということで複数年契約が欲しい。一般論として、プロ野球球団はシーズン後半には各選手と契約更改の意見のすり合わせを行う。おそらく、館山も「複数年契約」の希望を伝えていたと思われる。
したがって、複数年契約を交わすのなら、基本ベース・1億円の上がり幅は微増で、出来高の幅を大きくなるのでないだろうか。20%増で、1億2000万円。但し、出来高は5000万円あたりまで幅を広げる、と。また、手術明けのシーズンということで単年契約しか交わせないのであれば、1億5000万円から1億7500万円と予想する。2億円でも安いくらいのチーム貢献度ではあったが、90年代の古田、池山、広沢たちも年俸1億円を越えてからは、2倍増はほとんどなかった…。
館山は投球術にも長けた投手でもある。スライダー、カットボールなど変化球は10種類以上を操り、今季規定投球イニングに到達した投手のなかで、与四球「29」(180回3分の2)という少なさを誇る。防御率2.04。四球の少ない投手は、守備に着く側(野手)からすれば、テンポがあるので守りやすい。来季は右肩故障の由規、青木宣親外野手のメジャー挑戦等もあり、現時点では「不安要素」を抱えながらのスタートが予想される。復帰の時期を含め、館山の存在感がさらに増すことになるだろう。(スポーツライター・飯山満)