08年オフ、FA権を行使し、一時は阪神入りが有力視されたが、球団首脳陣の説得で残留。『3年9億円』(推定年俸3億円)で契約が交わされ、今季がその最終年でもあった。成績は18試合登板5勝6敗、防御率2.91。投球回数111回3分の1。前年の成績(3勝8敗/16試合)と比べれば、「復活の兆し」も感じさせるが、FA残留後の3年間で21勝しか挙げていない。今季初登板は開幕4戦目、つまり、第2節の3連戦初戦を託された。首脳陣はローテーションの主軸として計算していたわけだが、5月5日から約2カ月間、不振で二軍落ちしたのは痛かった…。
初勝利は7月10日(対中日戦)。自身3試合目の先発となる5月4日、2回途中で大炎上し、その後再調整に徹して復活マウンドで勝利投手となった。しかし、その7月10日以降、勝ち星こそ伸び悩んだが、投球内容については『プラス査定』と言っていい。同中日戦以降、『クオリティースタート』(6回3失点以内/以下=QS)は12回。先発投手の責務は「ゲーム主導権を掴むこと」。シーズンを通じて見てみても、『先発18試合で12回のQS』を挙げたのは、さすがである。
新しい親会社となるDeNAは高田繁・元ヤクルト監督のゼネラルマネージャー就任(以下=GM)を決めている。日本ハムGM時代に振るったチーム編成力と眼力を考えれば、三浦の勝敗以外の貢献度、投球内容の高さを十分に評価してくれるはずだ。
しかし、『推定年俸3億円』の現状維持は厳しいのではないだろうか。今季、三浦の最長投球回数は『8回』。完投は1試合もない。ちょっと乱暴な比較になるが、主砲・村田修一の推定年俸は2億2000万円。『野球協約の定める減額制限25%』を三浦の推定年俸で考えると、7500万円。この「7500万円まで」が球団と三浦の話し合いとなり、“下げ幅”ともある。
約20年のチーム貢献度も加味し、2億4000万円といったところだろうか。あるいは、三浦が球団経営の諸事情を踏まえ、「減額制限以上」を受け入れるとすれば、『2億円プラス出来高2〜4000万円』で落ち着くと思われる。
三浦が今季初勝利を収めた7月10日、投球スタイルが少し変わっていた。緩急とコントロールで勝負するのは今まで通りだが、ストレートの使い方が変わっていた。その日の最速は144キロ。直球のキレ、スピードが増した。対戦チームの中日ベンチも「(真っ直ぐが)手元で伸びていた」と賞したが、横浜関係者によれば、5月5日以降の二軍調整中、短距離走の練習に重点を置いてきたそうだ。同20日からの1イニングずつではあるが、志願して3試合連続で登板している。得意のスローカーブを有効的に使うため、直球のキレ、スピード、威力を取り戻そうとしたのだ。数年前になるが、ベンチ登録から外れる日もチームの全体練習に加わり、さらに横浜スタジアムのスタンドの階段を昇り降りする姿を目撃したことがある。こういうひたむきさ、練習熱心ぶりが、チームを奮い立たせるのである。
7月10日、殊勲打を放った稲田直人も「三浦さんに勝ってもらいたかった」と話していた(試合後の談話)。
今季、横浜の先発投手陣がマークした『QS』は59回。他球団と比べ、多い方ではない。『QS』が果たされた試合の成績は30勝25敗4分け。勝率5割4分5厘。先発投手がゲームメイクしても、5割そこそこの勝率しか挙げられないのは何故か? 7イニング以降の疲労と同時に先発投手が集中力を失い、打ち込まれた試合もあったが、打撃陣の拙攻も目立った。クローザー・山口俊に繋ぐ前にセットアッパーが踏ん張りきれないシーンも見られた…。こうした弱点をどう解消するかが、新監督の責務ともなる。チーム再建の先頭に立つのは、やはり三浦である。(スポーツライター・飯山満)