清水は8・31日本武道館で同級王者のウーゴ・カサレス(メキシコ)を破り、同級の“正規王座”を奪取した。ところが、清水はこの試合で右眼窩(がんか)底を骨折し、当面、防衛戦を行えない状況に陥った。清水の王座奪取当初は亀田兄弟の次男・大毅(22=亀田)との防衛戦も浮上したものの、清水の負傷で亀田陣営はターゲットを暫定王者だったテーパリット・ゴーキャットジム(22=タイ)に切り替えた。しかし、WBAが暫定王座を乱造するため、JBC(日本ボクシングコミッション)は2月に国内でのWBA暫定王座戦を認めないことを決めている。
そこで、飛び出したのがWBAのメチャクチャといえるゴリ押し。WBAは大毅との王座戦を計画するゴーキャットジムを正規王者に格上げし、正規王者の清水を“休養王者”に、事実上降格させた。この措置には、亀田陣営とWBAとの密接な関係が見え隠れするのだ。ゴーキャットジム対大毅の“疑惑”の正規王座戦は、12・7大阪府立体育会館「亀田祭り」で行われる。
この措置に、正当な王者の清水が涙で怒りをぶちまけたのだ。11月13日、都内のホテルで開かれた金子ジム45周年と自身の世界王座奪取を祝うパーティーに出席した清水は、WBAから届いたチャンピオンベルトを手に、「休養王者とは何なのか。こんなのがまかり通って、ボクはボクシングをがんばってきて、ムダにされた気持ち」と涙の激白。さらには、ホコ先を亀田陣営に向けると、「個人的には今後、亀田兄弟とはリング上で関わりたくない」と嫌悪感を露わにした。金子ジム・金子健太郎会長は「そもそも休養王者の定義が分からない。今後どうするかはこれから決める」と語った。
仮に大毅が12・7大阪で王座を奪取した場合、正規王者の大毅と休養王者の清水との統一戦が浮上してくるが、清水陣営がそれを不当とみなして拒否すれば、清水には暫定王者への降格、あるいは王座はく奪といった処分が下る可能性も出てくる。WBAの不可解なやり方の犠牲となった清水。今後、泥仕合になる恐れも出てきたといえよう。
(落合一郎)