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本拠地移転へ 日本ハムが目指すボールパーク構想(2)

 日本ハム球団が札幌ドームを本拠地としたのは、2004年だった。02年7月のオーナー会議で承認されたわけだが、当時、札幌ドームは西武球団が準フランチャイズ化を進めていた球場でもあった。

 いや、単なる球場ではなかった。札幌ドームはサッカースタジアムにも変化する。昇降式ピッチャーズマウンド、人工芝巻敷機、ムービングウォール、開閉式可動席、遮光スクリーン…。まるで、テレビ番組の特撮・戦隊シリーズの乗り物が合体して、ロボットに変形するように、ドーム内のマウンドや座席、フェンスが動かされ、120m×85m、8300tのホウァリングサッカーステージがドーム内に進入してきて、“サッカースタジアム”に変化するのだ。

 その作業過程の映像は球場内でも公開されている。まだ、ダルビッシュ有が在籍していたころだが、米国人ライターと札幌ドームでの日本ハム戦を観戦したときだった。乗り物がロボットに変形する映画『トランスフォーマー』を指して、「そのホンモノを観ているみたいだ」と驚いていた。

 これだけ大掛かりなスタジアムを造ったとなれば、当然、維持費も掛かる。日韓共催のワールドカップ大会が開催された02年に取材した限りだが、「建設費は422億円、年間維持費は10億円」と聞かされていた。日本ハムの移転が決定する前段階だが、「赤字額は年間25億円」との概算も伝えられていた。

 サッカーのコンサドーレだけでは札幌ドームを維持できない。そう考えたのだろう。東京ドーム時代の日本ハム球団は「年間30億円の赤字」を抱えていたとされ、経営改革を迫られていた。札幌ドームの使用料は1試合800万円(観客2万人以下)、02年当時の球団スタッフの話によれば、「東京ドームの使用料の半分以下、40%ほどで済む。年間支出も5億円くらい減るはず」とのことだった。

 しかし、それだけでは終わらなかった。日本ハム球団は累積赤字を解消しただけでは満足できないほど、球団経営を進化させていたのだ。

 「選手戦力を数字化するBOS(ベースボール・オペレーション・システム)を日本で最初に導入したのは、日本ハムでした。今では全球団がそれに類似したシステムを持っていますが、一時期、巨人までが日本ハムに相談に来たほどです」(在京球団職員)

 2016年4月、札幌ドーム側は日本ハム球団に対し、球場使用料を値上げした。これまでは、2万人以上を集客した場合、「観客1人につき400円の別途料金」を球団は払っていた。だが、「年間9億円」と決められ、その関連費用は約17億5000万円。日本ハムの選手総年俸は約27億円だから、それに匹敵する支出となった。

 プロ野球球団の年間収入平均は約100億円。その内訳は入場料、グッズ収入、球場内広告料、売店の売上げ、スポンサー広告料、テレビ放映料など。日本ハムは推定120億円の収入があったとされるが、球場内広告料と売店の売上げは球団には入らず、札幌市に流れる契約になっていた。球団決算は近年、黒字を続けていたものの、「本社からの広告料約27億円を加えて、辛うじて維持していた」(関係者談)という。

 「札幌ドームでは野球以外のイベントも行われています。その都度、日本ハム選手が使うトレーニング機器などを一時的に撤去しなければならず、再設置の人件費も球団の負担となりました」(前出・同)

 札幌ドームにもっとも観客を集めているのは、日本ハム球団である。そのスケールメリットが働かないことへの不満は、一般企業ならば当たり前だろう。

 球団はスケールメリットが働かないことで移転を検討したのではない。きっかけにすぎない。観客を増やすには1枚のチケット代に相応しいサービスを施していかなければならない。球場を自由に使えなければ、ファンサービスにおける自由な発想もできない。本社からの広告出資に頼らない球団経営を目指す――。球場のボールパーク化が当たり前であるメジャーリーグの経営スタイルを学び、自前球場を持つ必要性を感じたのだ。(スポーツライター・飯山満)

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