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連勝で暴かれたヨシノブ采配の弱点

 就任2年目の高橋由伸監督(42)は連勝スタートを切った。2戦目は主砲・阿部慎之助(38)のサヨナラ3ランという劇的勝利だった。こういう勝ち方はチームを勢いづける。しかし、気になる場面もあった。阿部の一撃が出る数分前のことだ。

 代打・村田修一(36)が右前打で出塁する。一死一塁、高橋監督は俊足の重信慎之介(23)を代走に送る。スコアは1対2、巨人ファンのボルテージも一気に高まったが、次打者・立岡宗一郎(26)の仕草がちょっとおかしい。相手投手が一球を投じるごとに三塁コーチャーのほうを見る。この場面では、単独スチール、犠打、エンドランなどの攻撃が考えられる。試合後、関係者によれば、立岡はそのサインがいつ出るのかと待っていたという。結果は一塁ゴロで走者・重信が二塁に進み、3番坂本が死球を選び、4番阿部の一撃につながったわけだが、得点好機を広げられるかどうかの大事な場面で立岡にも自由に打たせたということは、高橋采配は「選手個人の能力」で相手ピッチャーを攻略しようとしていたわけだ。

 「立岡を信頼していたという意味もあると思いますが」

 先の関係者はそう説明していたが、就任1年目だった昨季を見る限り、高橋監督はリスクを冒さない慎重派の印象を受けた。

 その一例が代走の使い方である。昨季まで、巨人には代走のスペシャリスト・鈴木尚広がいた。

 鈴木は9回最後の攻撃、「一打同点、サヨナラ勝ちを…」の場面で起用されてきた。その鈴木の盗塁数だが、昨季は10(失敗ゼロ)。一昨年の前任者時代も10(失敗1)。盗塁数は変わっていないが、鈴木の出場試合数は15年の「65」から「44」に減り、代走で出場しても、「初球送りバント」の采配が目立った。また、チーム全体の盗塁数も減少した。15年はリーグトップの「99」をカウントしたが、高橋政権では「62」に減った。「確実に二塁まで進める」采配であり、前任者の時代のように単独スチールで二塁を落とし入れてから攻撃を仕掛ける「冒険野球」とは大きく様変わりした。

 こうした高橋采配を踏まえ、立岡を自由に打たせた件について、コーチ経験を持つプロ野球解説者はこう語っていた。

 「立岡にエンドランのサインを出し、それを相手バッテリーに読まれてしまえば併殺プレーを被り、ゲームセットになっていたかもしれません。代走の重信は群を抜いて足が速いし、立岡に自由に打たせたとしても併殺はない、右方向にしっかり転がしてくれると判断したのでしょう。次の坂本、阿部で勝負するための安全策です。采配は間違ってはいない」

 だが、中日の指揮官は黄金期の西武野球を熟知した森繁和監督である。「相手の嫌がることをする、自分たちがやられてイヤなことを相手にもする」と繰り返し語ってきた。9回一死一塁の場面で、「相手のイヤがること」を考えると、単独スチールではないだろうか。アウトカウントを増やさずに二塁ベースを落とし入れれば、一打同点というプレッシャーは相当なものになる。もっとも、盗塁失敗となれば、好機は完全についばまれてしまうが…。

 「仮に単独スチールを仕掛けていれば、失敗しても意義はあったと思う。各対戦チームは『今年の巨人は盗塁を仕掛けてくる』と判断するので、9回の攻防で相手バッテリーは盗塁を警戒しながらの配球を強いられます」(前出・プロ野球解説者)

 森監督を始め、ネット裏のライバル球団スコアラーたちは「今年の阿部は要注意」と捉えていた。巨人はサヨナラ勝ちをおさめたので高橋監督の慎重な采配は成功したわけだが、次に、一打同点という場面になったら、対戦チームのバッテリーは阿部と勝負して来ないだろう。(スポーツライター・飯山満)

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