北広島市は新千歳空港から札幌駅方面に向かうJR北海道・千歳線の途中にある。道内では札幌圏のベッドタウンとして近代化も進んでいるが、人口は約6万人。政令指定都市の札幌の比ではない。
「球団はあえて、地方に行こうとしている。どうして?」
北広島市が日本ハム球団の進める『ボールパーク構想』のパートナーとして名乗りを上げたとき、道内からそんな声も多く聞かれた。
そんな道民の疑問の声が上がった理由が、もう一つある。とにかく早かったのだ。同年5月23日に第一報が出てから、立候補まで1か月と間を空けなかった。地元メディアのなかには「5月中、球団と北広島市側はすでに会っていた」と言い切る者もいた。
北広島市がボールパーク構想の候補地として挙げたのが、『きたひろしま総合運動公園』(約37ヘクタール)。まだ使われていない敷地の約20ヘクタール分を提案してきた。すでに球団との実務者協議も始まっており、今年4月の段階で5回目を数える。施設配置やグラウンドデザインなどに関する外部の専門会社を加えての意見交換も行われた。
この北広島市の迅速、かつ具体的な対応を見ると、日本ハム球団の北広島市移転はすでに決まっているような印象も受けた。
球団は「札幌市からの移転前提」の報道を完全否定していたが…。
一方、札幌ドームからの撤退案を突き付けられた札幌市側だが、行政として「全力で慰留する旨」は決定している。しかし、北広島市に対抗できる提案書を正式に示したのは、4月14日。秋元克広市長自らが球団事務所を訪ね、その詳細を説明したものの、実務者協議が始まるのはこれからだ。
そもそも、ボールパーク構想とは何なのか。また、日本ハム球団が札幌ドーム移転を検討しなければならない理由はどこにあったのか。日本ハム球団が目指す構想とは、まず、自前球場を持つこと。そして、その周辺に何年か掛けて商業施設、ホテルなどを隣接し、公式戦の行われていない時期も多くの人が集まる『空間』を造ろうとしている。
「札幌ドームを運営しているのは第三セクターです」(地元関係者)
球団がファンサービスのイベントを企画し、球場内で新しいメニューの飲食物を考えても、実現できないことのほうが多かった。ファンサービスはもちろん、集客アップのための企画を実現していくためには、自前球場でなければならない。球団はそう決断したのだ。
プロ野球12球団のなかで、自前球場を本拠地としていないのは(経営権委託を含む)、東京ヤクルト、巨人、そして、日本ハムの3球団だけだ。DeNAの横浜スタジアムや広島のマツダスタジアムなどが観客動員数を増やしていることが、日本ハムを後押ししたようだ。(スポーツライター・飯山満)