同番組は、心身のいずれかに“障がいを抱えている”とされている人間が出演している。この日は、身体も戸籍も女性となったタレントのKABA.ちゃんをはじめ、呼吸器系に障がいを持つNPO法人理事長の女性、同性愛者の男性弁護士などのメンバーがそろった。この中に視覚障がいを持つ漫談家として濱田もトークに加わった。
濱田と言えば、ピン芸人の日本一を競う大会『R-1ぐらんぷり2018』(関西テレビ・フジテレビ系)で優勝して話題となった、視覚障がいを持つ漫談家だ。同番組では、“視覚障がい者あるある”を主軸とする濱田の話芸を一般視聴者がどう感じているのか調査した。
濱田と同じ視覚障がい者にインタビューすると、「すごい爆笑しました、よくぞ言ってくれた」「あんまり笑わなかった。あーあるあるみたいな感じで」と賛否が分かれる結果となった。
健常者へのインタビューでも「(自分たちには見えていない世界だからこそ)面白かった」「笑っていいのか分からない」と、ほとんど同じような反応。その他、ネット上の声も「もっと色んな番組で見たい」「なんか微妙」「つまらない」と千差万別だった。
視聴者からの反応は、賛否どちらも“視覚障がい者の漫談“への感想に思える。こうした視聴者の評価について、濱田自身はどう考えているのだろうか。
濱田は、同番組に招かれること自体に違和感があったようだ。番組の中で「僕の漫談がこんな福祉番組で取り上げられるとは思っていなかった」と笑いながら漏らしたのが、紛れもない本音だろう。「僕はあくまでも濱田祐太郎としてしゃべっているので、視覚障がい者代表としてしゃべっているわけではない」と、“自分は単なる漫談家だ”という姿勢を崩さなかった。
番組内ではMCの千原が、「視覚障がい者ネタはあくまで“切り口”であり、自虐的な笑いではない」と濱田をフォロー。千原以外の共演者は“視覚障がい者がR-1ぐらんぷりで王者になった社会的な意味合いは大きい”と称賛した。しかし濱田は自分はそこまで考えて漫談をしているわけではないとでも言いたげな顔。「何をしゃべっているのか…」と苦笑し、首を傾げた。
濱田は、「視覚障がい者」と見られて笑いを起こせないのなら、それを自分の“実力不足”が原因だと捉えるようにしながら淡々と活動しているようだ。もちろん彼自身の思いとは裏腹に、世間の感覚はすぐに変わるものではない。万人が彼の笑いを受け入れるのは難しいだろう。しかし、彼の“切り口”が健常者にはない新たな笑いの発見となる可能性もある。
以前と比べて障がい者への理解が進んでいる世の中ではあるが、“頑張って乗り越えようとしている”という余計なノイズを生んでしまっている現状もある。お笑い芸人にはネックとなる問題だろうが、時間をかけて漫談家・濱田の笑いが成熟していくことに期待したい。