「今月中にロサンゼルス市内の病院で診察を受け、キャンプ、オープン戦期間の練習内容が最終決定します。メスを入れた右肘の回復具合も良好だと聞いているし、特段(練習メニューの)大きな変更はないと思いますが」(特派記者)
メジャーリーグの2月キャンプは、投手・捕手のバッテリー組と野手組でそれぞれ始動日が異なる。野手組が遅れて始まるのだが、大谷はバッテリー組に合わせて現地入りするという。もっとも、今季は「投手・大谷」の登板はない。靱帯を移植するトミー・ジョン手術の影響もあるが、エンゼルス首脳陣は“より慎重な対応”をとると明言している。二刀流の復活は2020年シーズンとなる。
それでも、投手・大谷のスケジュールでキャンプインする理由だが、「大谷は別メニュー調整になります。別メニューということは練習量が減る。それでは、長いシーズンを乗り切るだけの体力は養えません。1日の練習量が減る分、日数を長くして」(前出・同)
関係者はこのように指摘する。しかし、理由はそれだけではないようだ。
エンゼルス球団と地元・アナハイム市議会の攻防は佳境を迎えつつある。
「球団は本拠地エンゼルスタジアムのリース契約を2020年まで延長することを承認しました。昨年10月、球団は2028年まで結ばれていた同球場のリース契約を破棄し、『19年シーズンまでしか使わない』と主張する状況になっていたんです」(米国人ライター)
球場は地元自治体の所有物だ。球団はそれを借り入れている。昨年にエンゼルスが長期契約を破棄し、1年間だけの契約延長を選択したのは、アナハイムの市議会と衝突していたからだ。
近年、球団は老朽化の激しい同球場の改修工事の必要性を強く訴えてきた。しかし、予算不足からか、その計画はいっこうに具体化されていない。それに業を煮やして、28年までの長期契約を破棄したわけだ。
「大谷がキャンプ地のアリゾナに入れば、米メディアも彼を追いかけて現地入りするのは確実です。米国中が二刀流の復活に注目しています」(前出・同)
つまり、エンゼルス球団は「大谷」というスターの稀少価値をアピールしていくことで、本拠地の改修工事を急がせたいのだ。
「エンゼルスのオーナー、モレノ氏は『アナハイムに残留するのが一番なんだが』というコメントを発してきました。市の対応次第では本拠地移転の意向があるとも取れますし、アナハイム市議会にプレッシャーをかけているつもりなんでしょう。アメリカの自治体は、税収や雇用確保のため、MLBなどの4大プロスポーツの本拠地誘致に熱心です。ネバダ州ラスベガス市は、すでに球場を建設してあって、『いつでも本拠地として移転してきてください』とアピールしています」(前出・同)
「人気の大谷がアナハイム市から出てしまってもいいのか?」と迫られれば、市議会も考えなければならない。
大谷自身、そんな政治的な駆け引きは知らないはずだ。マジメに復帰を目指しているだけだが、二刀流復活に向けて加速すればするほど、アナハイム市議会も動かざるを得ないだろう。(スポーツライター・飯山満)