『鯨の目―成田三樹夫遺稿句集』無明舎出版 2800円(本体価格)
★悪役スターが病床で綴った句と読書ノート
毎年のNHK大河ドラマが本放送開始となる直前に、本屋の店頭に並ぶガイドブック。主人公役を筆頭にほとんどの出演者が役作りへの意気込みや仕事の抱負などそれらしく語るはずのところ、’83年の『徳川家康』で今川義元を演じたその男は違った。記憶で書くが“役者など本来、明日にでも陋巷に窮死すべき職業…”とある彼のインタビューの、まあ周囲からの浮き具合といったら。
その男、成田三樹夫。野太く艶と張りのある声に鋭い眼差しが印象的な彼の代表作といえば『仁義なき戦い』シリーズでのニヒルなようで計算高いヤクザの松永役や、松田優作の『探偵物語』シリーズでは“工藤ちゃ〜ん”の台詞でおなじみ服部刑事のねちっこさはもちろん、他に『座頭市地獄旅』の将棋好きの浪人・十文字糺や『伊賀忍法帖』での戦国時代の妖術使い果心居士、そして『柳生一族の陰謀』でのやたら剣の腕が立つ公家や『宇宙からのメッセージ』では全身銀粉塗りで怪演した悪役ぶりなど枚挙に暇なくいまだに忘れ難い。
’90年にまだ55歳の若さで病没した彼が晩年に打ち込んだものが俳句、それも山頭火や放哉流のいわゆる自由律俳句だった。五・七・五の定型にとらわれない「ひそと動いても大音響」「六千万年海は清いか鯨ども」「山芋をすする音わたしがすすっている」といった作品の数々に加え、文学・哲学から自然科学の専門書に至るまで多岐に亘る読書メモや若き日の詩が綴られたノートとで構成された本書は、著者の死の翌年に初版が刊行以来長らく一般書店の棚ではなかなか見かけられず、筆者が入手したのも成田三樹夫映画祭を謳った名画座での特集イベントでのこと。その名画座も歴然と減った昨今、装いを新たに甦って何より。新旧どちらのファンにも贈り物だ。
(居島一平/芸人)
【昇天の1冊】
『48手ヨガ 江戸遊女に学ぶ女性ホルモンと体力活性法』(駒草出版/1350円+税)は、タイトルに「48手」とあるがエロい内容ではない。純粋に女性向けのダイエット本である。春画の題材として人気の高い大江戸四十八手の奇抜なポーズをもとに開発された、「48手ヨガ」の実践マニュアルなのだ。
だが、その書籍を『週刊実話』のオヤジ読者に紹介したいのは、江戸の遊女をモデルに描かれた四十八手が実は単なるセックスの描写だけではなく、ホルモンの活性化による若々しさの維持やセックスの回数・感度アップなど、女性が美しさを保つうえでの㊙テクニックでもあったのだ。だから、男も読んでおいて損はないと思えるからである。
例えば、四十八手の体位を駆使することで遊女たちは膣の締まりを鍛えていた、それこそ最高の健康法であったなどが解説されている。
つまりこの本を読み、内容を妻や彼女に伝え、またベッドで反復することによって相手は感じやすくなり、セックス頻度も格段に増え、もしかしたら女性のほうから夜毎求めるようになるかもしれないという、男にとってウハウハの性生活が待っている可能性を秘めているのである。
著者は日本女性ヘルスケア協会長の鈴木まりさん。書籍の帯に掲載されたポートレート写真を見た通り、知的かつセクシーさも持ち合わせた美女である。
ダイエットの効果で、パートナーがこんな美人に変貌してくれるとしたら…ウレシイではないか!
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)