危なっかしい相撲内容で何とか星を拾って序盤戦を乗り切り連勝してきた朝青龍だが、この日の豊ノ島戦は完全復活を証明する圧勝だった。
これまで、あえて後手に回っていた立ち合いから一変、一気に勝負に出た。ややフライング気味に立ちあがると瞬く間に襲いかかった。
奇襲はまんまと成功した。痛めていた左ヒジを目いっぱい伸ばし、強烈な左のど輪で先手を取った。面食らった豊ノ島の巨体をのけぞらせると、あとは右からおっつけて突進あるのみ。昨年の名古屋と秋場所で連敗した難敵を、ものの3秒足らずで土俵下まで押し出した。
今場所最高の相撲内容に、朝青龍自身は上機嫌だ。支度部屋では、これみよがしに痛めていた左ヒジをさすり「一番良い相撲だった。いい出足。(相手を)起こして起こして前に出た」と自画自賛。進退問題をかき消す6連勝についても「まだ初日みたいなもんだ」とうそぶくなど自信を完全に取り戻している。
土俵で完全復活を遂げたと思いきや一難去ってまた一難。この日は、インターネット掲示板2ちゃんねるに「朝青龍を殺す」と殺害を予告して逮捕された容疑者に対し、15日に「オレが殺してやるよ」と息巻いたことが波紋を広げた。
日本相撲協会の武蔵川理事長から「あれは冗談でも言ってはいけない。注意する」と怒りをかったのだ。
朝青龍は理事長のカミナリが落ちる前に迅速に対応する。前日の発言について触れ「俺は殺せるもんなら殺してみろって言ったんだ」と主張。さらには「ひどいじゃないか。もうしゃべんないぞ」と“朝青龍節”で報道陣を牽制することも忘れなかった。
ようやく本来の姿を取り戻した朝青龍。進退問題をはねのけて無傷の6連勝を飾ったことで、復活Vも見えてきた。